ストーカーのストーカー

 私は今、ストーカー被害にあっています。思い込みではないかと、思われるかもしれませんが本当です。正直私にストーカーするほどの魅力があるとも思っていません。でも、ストーカーがいるのではないかと思い始めたのは、半年前にさかのぼります。


 その時は、接客業の正社員として働き始めたくらいで、その帰り道の電車から、私は気味の悪い視線のようなものを感じたのです。自分の体を舐め回すような視線に、私は気が狂いそうになり、走りだしました。


 すると、後ろから追いかけるような足音が聞こえてきました。さらに私は、途中で止まったり、走ったり、いつもと違う道へ行きましたが、その視線は常に一定で私を追いかけてきていました。振り向くと、なにかされそうで、私はおびえながら走りました。


 この時、なんとか撒いて家にたどり着いたのは、今でも幸運だったと思います。ですが、そのストーカーはその日から、毎日毎日私の家の近くまでついてくるのです。早上がりしても、深夜近くまで働いた後だったとしても、その視線はずっとそばにいるような気がしていました。この半年間は、かなりつらかったです。


 でも、ある日を境に私はストーカーを気にしないようにしたんです。

というのも、仕事先の先輩から『ストーカーは逃げ惑う姿をみて満足するタイプもいる』という言葉を受けたからです。私はなるべく視線を気にせずに家に戻るようにしました。


ですが、それは悪夢の始まりでした。


 ストーカーを無視するようになってから数日、ストーキングに加えて、ピンポンダッシュが頻発するようになったのです。しかも、私のいる時間帯を狙っているかのようなんです。私は我慢できず、あのストーカーだと確信して、警察に電話しました。ですが、顔を見ていないので、彼らの腰はかなり重たかったです。というか、適当にあしらわれて、次に顔を見たら110番をかけてくださいの一点張りだった。なので私は、ストーカーをストーキングすることを決心しました。それがつい3日前のことです。


 私は意を決して会社帰り、駅から自宅に戻る途中にある公園まで走り、ストーカーが探すのを諦めるまで、隠れることにしました。ちょうどタコのような中に入れるタイプの遊具があったので、その中で息を潜んでいました。ストーカーは私を探すため、公園を見回しました。途中、私の隠れていた場所まで来ましたが、途中でその人物に電話がかかってきたのか、捜索をやめました。ホッとしたのも束の間、そのストーカーは急に駅の方へ走り出したのです。私は少し間をあけて同じ方向へ走り出しました。追いかけると、2,3m先くらいに電話しながら走る体格の大きな人がいました。私はきっとその人だと思い、その人を追いかけました。電車へ乗り、気づかれないように数メートル離れたところでずっと監視し続けました。ですが、途中で見失ってしまいました。その日は、それで諦めました。


 それから数日、何度かストーキングをしてその人物が20代くらいの男性で、独身であることまで突き止めました。それで現在に至るのですが、今だに彼の顔を見ていません。名前もわかりません。いつも途中で見失って、自宅の特定まで至っていないからです。そこまでする必要があるかと思われるかもしれませんが、今まで辛い目や、怖い目に会って来たので、それくらい特定しても仕方ないと思っています。というか、それくらいしないと警察も動いてくれないでしょう?


 それから、ストーカーされたり、したりを繰り返す生活が始まりました。

今でも彼の名前も、家もわかりません。向こうは知っているのに、不公平です。

ですが、とても奇妙なことが起き始めたのです。私が、ストーカー行為をしていると、ふと後ろから視線を感じるのです。これまでと同じか、それ以上の悪寒を感じました。その人物はどうも私をみているようにしか感じられませんでした。


 とても不快でした。私はこれまでにないくらいの勇気を振り絞り、振り返りました。ですが、そこには誰もいません。一体、あの視線はなんだったのでしょうか。今度、彼のことも調べてみたいと思います......。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る