第6章 『対決‼ 龍気体』

24話

「ぐぉぁ……‼」


 背中を羽交い絞めにされている状態で、正面から迫りくる強烈なストレートが俺のみぞおちに入った。


 その耐えがたい痛みに、歯を食いしばっていた口が自然と開き、うめき声が漏れ出す。


「ぜぇ……ぜぇ……いい加減諦めろって言ってんだろうが‼」


 そんな悪態を吐くと同時に、俺の目前にいる龍気体員は思い切り振りかぶった拳で、容赦なくもう一発を繰り出そうとした。


 だが、俺はその振りかぶった隙をついて、後ろを押さえているもう一人の龍気体員に後ろからの頭突きをくらわせる。


「二度も喰らうかよッ……‼」


 その勢いで後ろがよろけた瞬間に、重心を下ろして拘束から逃れる。


 そうして、放たれたパンチはそのまま俺を羽交い絞めにしていたもう一方の龍気体員へと直撃し、綺麗なまでの同士打ちをくらわせることに成功した。


 強烈な一撃をもろに顔面に食らった龍気体員はそのあまりの威力から、直後にしゃがみこみ、赤く染まった鼻を押さえながらその場にうずくまっている。


「何やってんだ馬鹿‼ しっかり押さえてろって言っただろ‼」 


「痛っ……そっちこそ、殴る相手考えてよ‼ 俺に攻撃しても意味ないでしょ⁉」


 自滅に続いて仲違いとは。これで終いにしてくれれば良いと思うものの、それで諦めてくれるようなら数十分も殴り合いが続けているわけが無い。


 お互いに悪態を突き終わって、調子を取り戻すとすぐ、臨戦態勢を整えだした。


 対する俺の方も、彼らの次なる攻撃に注視するためにマスク越しに彼らの方を見定める。


 どうやら先ほどよりも視界がクリアになっているのか、二人の龍気体らの殺意むき出しの目が俺をじっと睨んできた。


「てめぇ……外部の分際で調子乗りやがってぇ……‼」


「いい加減降参しろよ⁉ そのマスクだって、もうボロボロだろ‼」


 そう言われて、装着しているマスクに手を触れてみると、猛攻の挙句、左目の部分に関しては既にその装甲が剥がれ落ちていた。


 道理で妙に見えやすくなったと思うわけだ。それさえも気づかないほどに、俺の体はへとへとらしい。


 だからと言って、ここで弱音を見せるわけにはいかなかった。


「へっ……お前らはマスク割れなんて概念ご存じないだろうけどなぁ、ヒーローってのはそこからが正念場なんだよ‼」


 そんなやせ我慢を言葉にするも、殴られっぱなしのこの体は既に限界ギリギリのようで、頭はマスクで守っていたはずなのに、どうも思考がはっきりしない。


 そんな朦朧とした頭に、まるでフラッシュバックするかのように、ここに至るまでのの状況が唐突に流れ込んできた。 


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