第24話 恋のラッキーアイテム?エッグハムチーズマフィン。
翌朝、5時。
煌冷香はすでに起きていた。そして、そっと家を抜け出した。ついに家出か?いや、違う。全力でウォーキングしていた。
「エッホ、エッホ、、ひぃぃ!辛いっ!」ゼェゼェ‼
煌冷香は本気で痩せる決心をしていた。毎日走れば痩せるだろうと、メラメラと燃えていたが、いざ走ってみるとめちゃくちゃ膝に堪えた。仕方なく、全力でウォーキングしていた。
「あ~!苦しいっ!このあと飲むコーラは格別に美味しいだろうなぁ!!」
純粋無垢の煌ちゃんは、食べものを制限する決意はできなかった。運動だけで痩せるつもりだ。
「私、決めたわ。全ての幸せをこの手で掴んでみせる!ゼェゼェ、、痩せてかわいくなる!そして、恋も手に入れる!!そして、イタリアにも行くわ!恋人を連れてっ!!」
これからの希望に満ちた未来のことを思うと、煌ちゃんの足取りは軽かった。膝と足首がちょっと痛かったけど、笑顔で頑張れた。
「よーし、この辺で折り返して、、ん。あ、、」
煌冷香の目に止まったのは、モーニングの営業をしているハンバーガーショップ。煌冷香には実は、もう一つ夢があった。
「あ、ああ、、まさか。こんな日が来るなんて・・・。」
煌冷香は、ハンバーガーを初めて食べた日から虜になっていたが、朝限定のマフィンを食べたことがなかった。そして、いつか家を抜け出して食べてみたいとずっと思っていたんだ。
「そうね、朝食はまだだし、この機会は逃したくないわ。ポケットには小銭入れだけ持ってきたし。うん!モーニングセットを食べるわ!!」
煌ちゃんは、ジャージを持っていなかったので、学校の体操着でウォーキングしていた。赤いジャージに白い体操服。「西園寺」と名札が縫い付けてある。
「いらっしゃいませ♪ご注文お決まりになりましたらレジへどうぞ~!」
店内に入ると、煌冷香は目を輝かせた。ついにあの、マフィンが食べられる。卵とハムとチーズが挟んであるらしい。そんなの、美味しいに決まっている!!
「お願いします、、この、Aセットをください。あ、単品でこのマフィンも。ドリンクはコーラで!」
「かしこまりました、西園寺さん♪」
「・・・え?」
煌冷香は自分の苗字を呼ばれて、しばらく固まった。なんでこの店員さんは知っているのだろうと。
「ああ、名札ですね。体操着に名札があるからそれで、、笑」
「いえ、違いますよ。名札がなくても知ってます。西園寺さん。」
「ふぇ??どういうことでしょうか??」
良く見ていなかった、店員さんの顔を見る。もしかして、同じ学校の方かしら、、。そして、物語は急展開を迎えるんだ。
「覚えてないかな?煌ちゃん?」
「・・・・あ、ああっ!!貴方は!」
「うん。恭子の元カノの、郁美だよ♪」
「ああっ!なんてお懐かしい!!郁美ちゃん、、ここでバイトを?!」
「うん。体操着で煌ちゃんが入ってきたからびっくりしちゃった。笑」
「あら、お恥ずかしい、、運動をしていたらハムの匂いがしたものですから、、」
「あはは、ハムがすきぃ~!ってキャラクターにちょっと似てるもんね!かわいい!」
久しぶりの再会。一度しか会ったことがない、旧友の恋人。
「ん?あれ?何か引っかかりが・・・。」
なんでしょう、、この感じ。なにか、とてつもなく重要な何かを見落としている気がするわ・・・。なんだ、、なんだろう、、コーラをLサイズにって言ってない、、いや、そういうことじゃなくて、、
「ああぁぁぁぁ!!!さ、さっき、元と仰いました!?元カノと!!??」
「ああ、うん。恭子から聞いてないんだ?別れちゃったんだよね。」
「な、なんてことでしょう、、現在の全脳様と未来の全脳様が出会ったかのように息がぴったりでしたのに!!」
「まぁ、そういうこともあるって。はい、じゃあ。この番号札でお待ちください。」
「え、あ、そうですね。お仕事中に騒いで申し訳ありません。それでは、、」
煌冷香の心臓は、ウォーキングと衝撃の事実によってどっこんどっこんと鼓動が激しくなっていた。コレステロール値を下げなければ、、いや、そんなことより、きょんちゃんが郁美さんと別れていたなんて、、
しばらくして、モーニングセットを受け取ると、カウンターの隅の方に腰をかけた。今になって体操着なのが恥ずかしい煌ちゃん。
「恋って、、想像を超えるわね。。ん?」
煌冷香が念願のコーラにストローを誘うとしたその時だった。
「ん、なんかストローの袋が汚い、、え?」
ストローの袋には、いくつかの数字がペンで書かれていた。そして、
「あれ、この紙コップも、、え?」
ストローの袋に書かれていたのは、郁美の電話番号だった。そして、紙コップに書かれていたのは、、郁美のチャットIDと、
『せっかく会えたから仲良くしよ。郁美』と言うメッセージだった。
思わぬことに、驚いた煌冷香はバッと郁美のいるレジの方を見る。すると、はにかんだ郁美が小さく片手を振っているじゃないか。
・・・・・とぅんく。。
さっきまでの心拍数の跳ね方とは違う。痛いようなくすぐったいような初めての胸の高鳴りが煌冷香を襲った。
(郁美ちゃん・・・。仲良くしてくださるのですね。ならば、毎朝ウォーキングしてここに来ることにしましょう。)
まだ、煌冷香にとってこれが恋なのかは、わからないのだった。そして、とりあえずマフィンが美味しすぎて煌冷香は泣いた。
続く。
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