第21話 パスタか恋人か。究極の選択だ、煌ちゃん

 しばらくしたら、イタリアに移り住むことが決まった煌冷香は、その日が来るのを心待ちにしていた。


「ああ、楽しみだわ。早くイタリアに行きたい!」


 そうだ。パスタの美味しいお店が学校の近くにあるって聞いたわ。明日にでも行ってみようかしら。


 期待に胸を膨らませ、お腹も膨らませるつもりの煌ちゃんであった。しかし、その夜、煌冷香は久しぶりにモイラに会うことになる。


「起きて。起きて、煌冷香。私よ。」


 --------------ん?

 煌冷香が寝ていると、綺麗な女性の声が聞こえてきた。目が覚めてキョロキョロと周りを見渡すと、ちょうどお腹の上に小さな小さなモイラが立っていた。


「あっ!モイラ様!やっと来てくれたのね!?」

「煌冷香~!会いたかったわよ。覚えていてくれて嬉しいわ。私はラケシスよ!」

「美味しそうなお名前!ラケシス様!お願いよ、次の未来を教えて!」


 ラケシスは、煌冷香のお腹の上で軽くジャンプを繰り返した。ぽよん、ぽよん、と気持ちよく弾む。


「ああ、煌冷香。ぽっちゃりしてもかわいいわね。私はあなたの今の体型も好きよ♡」


「ラケシス様がそう言ってくれるのは嬉しいけど、、ダディーとマミーはがっかりしているわ。小さい頃はあんなにかわいかったのに、内緒で間食ばかりしているからそんなに太って!っていつも小言を言われるの。」


「まぁね。夢で忠告したのにあなたは間食をやめなかったから・・・。それでね、あなたが選ばなければならない時が来たのよ。だから私が伝えに来たわ。」


「ごめんなさい、、せっかく夢でお知らせしてくれたのに、、このままだとダメなのよね。」


「それがね、煌冷香。未来が少し変わったの。あのね、未来という世界は数え切れないくらいあって、決まっていないのよ。私たちがあなたに見せている未来は、このまま進むと一番可能性が高い未来ってわけ。」


「ふんふん。なるほど。」


「あなた、、イタリアに行きたいのでしょう?」


「うん!とっても楽しみ!」


「あなた、、恋をしてみたいのよね?」


「うん!あのね、ラケシス様。私ってもしかしたら女の子が好きかもしれない。」


「やっと気づいたのね。良かったわ。煌冷香、貴方はこの人生で、女性しか好きにならないわ。そういう定めなの。」


「まぁ、そうだったのね。でもね、ラケシス様?私はまだ、好きな人がいないわ。だから好きな人に出会って恋をしてみたい。」


「そうね。あのね、煌冷香。貴方は近いうちに恋をする。だけど、それは日本でなの。貴方はイタリアに行くか、その恋を実らせるために日本に残るかを選ばなければならないわ。」


「ええっ!そ、そんなぁ、、どちらかなんて選べない・・・。」


「良く聞いて、煌冷香。貴方は今、ちょっとぽっちゃりさんでしょう?」


「うん。皆、スライムみたいでかわいいって言ってくれるわ。でも仲良しの咲ちゃんは身体が心配だから痩せろって。」


「貴方が今後痩せるか、ぽっちゃりしたままかというのも、選ばなければならない事が起きるわ。とりあえず、私の見立てでは、イタリアには行かずにここに1人で留まるべきよ。」


「え、でも、そしたら両親と離ればなれになるわ。」


「そうね。寂しいだろうけど、、まぁ選ぶのは煌冷香だからね。そろそろ時間だから私は行くわ。煌冷香、、ぷにぷにの貴方も大好きよ。でも貴方、確実に食べ過ぎだわ。じゃあね!」


「えっ!!それしか教えてくれないの?お願い、もっとヒントを~!!!!」


 500mlのペットボトルくらいのサイズしかないラケシスは、煌冷香のお腹の上でトランポリンのように何度か弾むと、思い切り飛んで天井の辺りで消えてしまった。


 ラケシスが何度も弾むから、腹筋のコアを鍛えられた煌冷香は、少しお腹が空いた。


「ああ、これで2度目のモイラの訪問が終わっちゃった。あと1度しかないのね・・・。もっと聞きたかったのに。。ああ、お腹が空いた。でも、、そろそろ本気で痩せないといけないかしらね。」



 それにしても、一番気になるのは近いうちに恋をするってところだわ。私が、、恋かぁ。うふふ、どんな人なんだろう。あっ!じゃあ、本気でダイエットしないとまずいわ!かわいい私を見てもらいたいもの!


 食べ歩きを続けるか、ダイエットを始めるか

 イタリアに行くか、日本に留まるか


 煌ちゃんの悩みは尽きなかった。


 続く。

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