第20話 あだ名は世界一かわいいスライムでした。
世の中の美味しい食べ物に出会ってしまった煌冷香は、ダイエットしながらも食べ物の誘惑に勝てなかった。
ぽっちゃりさんの煌冷香。恋よりも食に目覚めたまま、高校生になっていた。
「咲ちゃん!今日の放課後は空いてる?」
「煌ちゃん、、空いてるけど、何か食べるつもりなら遠慮しておくよ。」
「そう、、アフタヌーンティーの食べ放題に行ってみたかったんだけど。。」
「そんなの食べたら夕ご飯が食べられなくて親に怒られちゃうよ。」
「私はいつも夕飯は食べるようにしているわ。」
「そうだろうね。煌ちゃん、入学したときよりぽっちゃりしてきたよ。。」
都内有数の進学校である女子校に入学した煌冷香は、せっかく周りに女子しかいないのに食べることに夢中になっていた。放課後の食べ歩きがやめられず、部活には入らなかった。
入学してすぐに仲良くなった咲も少しふくよかな方だったが、煌冷香のほうが迫力があった。
「ねぇ、煌ちゃん。煌ちゃんが痩せたら多分、すっごくかわいくなると思うんだよね。」
「私も痩せたいわ。だけど、美味しいものが沢山ありすぎて、、。」
「食べ過ぎだよ。友達として心配なの。せめて放課後に主食を食べるのはやめなよ。」
「そうね、わかった。なるべく気をつける。」
煌冷香は、とりあえず今日は放課後の食べ歩きを我慢することにした。実際、太りすぎたので両親には間食していることがバレてしまっていた。煌冷香の言うダイエットとは、学校から電車を使わずに1時間半歩くことである。それ以外には何もしていなかった。しかも途中で間食をしている。
「ああ、モイラに未来を見せてもらったのに、そのまま現実になりそうだわ。困った・・・。」
そうねぇ、、これで恋でもしたら、私だって痩せたいって思うかもしれないわ。でも、今までまともに恋をしたことがないのに、、そう簡単に好きな人ができるわけがないよね。。
中学の時に、たまたまきょんちゃんと会った時のことを思い出す。きょんちゃんと、素敵な彼女さん。
「私もあんな風に恋がしたいって思っていたんだけどなぁ・・・。」
自宅に帰ると、いつもなら間食をしている煌冷香は小腹が空いていた。まだ両親はいないだろうとキッチンへと向かう。すると、リビングから声がしたのでそうっと覗いてみると、珍しく両親が揃って話していたのだった。
「あれ、ダディーとマミー。ただいま帰りました。どうしたのですか、珍しいですね。お仕事は終わったのですか?」
「煌冷香・・・。ちょうど良かった。話があるんだ。ここに座りなさい。」
「はい、、一体どうしたのですか。お顔の色が宜しくないようですが。」
「実はね、お父さんはしばらく、海外で仕事をすることになったんだ。それで、お母さんと君にもついて来てもらいたいんだよ。」
「な、なんですって!そんな急に!お国はどちらですか!?」*どの国に食べ物が食べられるのかやたら興味が湧いてしまった煌ちゃん。
「イタリアだよ。あちらで日本の美術品を売りながら、イタリアの美術品を買って日本で売るんだよ。」
「な、なんと!わかりました、行きます!」
煌冷香の頭の中には、パスタやピッツァが浮かんでいた。ああ、まるで夢のよう。ティラミスとパンナコッタが私を呼んでいるっ!煌冷香にとって、断るなんて選択肢はなかった。がしかし、母親が制した。
「まって、煌ちゃん。お母さんは大学の仕事があるわ。急にやめるなんてできない。だからそう簡単に家族で海外に行くなんて決められないのよ。」
「マミー。。確かにそうですね。うーん、、」
「お母さんが仕事を辞める時まで、貴方はここに残りなさい。私がいないと貴方は好きなだけ食べてしまうでしょう?」
「そ、そんなことは。。でも、わかりました。いずれは家族であちらに住まうということですよね。そのつもりで準備します!」
ダディーは悲しそうな顔で言った。
「煌冷香、、僕は君と離れて暮らしたくなんてないんだ。大事な一人娘だからね。本当なら、すぐに一緒に連れて行きたい。」
「ダディー。私だってすぐに一緒に行きたいわ。だけど、マミーと行くまで待ってて下さい。ああ、楽しみだわ。イタリア語を勉強しなくっちゃ!」
煌冷香は一通り両親から話を聞くと、すぐに自室へとこもった。インターネットで開いたのは、イタリアの地方料理について書かれたサイト。
「タリアッテッレ、、パッパルデッレ、、トリッパに、シチリアの鰯料理・・・!!待ち遠しいなぁ!!」
色気より食い気の煌冷香。新しい生活に期待とお腹を膨らませていたのだった。
続く。
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