第19話 なんて誘惑が多いのかしら

 煌冷香がカフェインにハマって数日後。


「はぁ、、コーラってなんて美味しいんでしょう。コーヒーってなんて美味しいんでしょう。。」


 家では水や麦茶、青汁などの健康に気を遣ったものしか飲ませてもらえなかった煌冷香。おかげで肌が珠のようにつるつるだったが、、世の中にある美味しいものを知ってしまった。いやなに、食べ過ぎなければ問題ない。しかし、煌冷香は両親に内緒で放課後に完食していた。


 知らずに体重が3キロ増えた頃だった。


 煌冷香の夢の中。


 あれ?これはまた、、明晰夢かしら。ここはどこ?


「私は・・・今、、45歳よね?」


 なぜだか、夢の中の年齢やそれまでの記憶がなんとなく思い出せる煌冷香。もう慣れたものだ。また変えなくてはいけない未来を見せてくれているんだと思った。強い心で周りを見渡す煌ちゃん。


 ここは、、病院ね。


「西園寺さーん。診察室へどうぞー!」

「はぁい。よいっしょっと。あー身体、重っ。。」


 煌冷香が診察室へ通されると、カルテを持った美人でグラマラスな女医さんがいた。そして診察が始まる。


「西園寺さんね。コレステロールの薬はちゃんと飲んでますか?」

「はい。飲んではいますけど、、」

「西園寺さん、、貴方の血液検査の結果はとんでもなく悪いのよ?ちゃんと治さないと、貴方がいつも言ってる好きな人とデートも出来なくなるわよ?」

「もう、フラれてしまいました。食べる量に引かれてしまって。つい、焼き肉屋についてすぐ、ライスと冷麺とカルビクッパを自分用に頼んでしまったんです・・・。」

「西園寺さん、、薬を飲んでるから食べまくっていいわけじゃないのよ。。」

「ご飯を美味しそうに食べる人が好きって言ってたのに・・・。うぅっ、、」

「泣かないで、西園寺さん。っていうか、限度があるのよ。いきなり主食を前菜みたいに食べられたら誰でも引くわ?」

「私の中では、、冷麺もカルビクッパも飲み物です・・・。」

「あはは。面白いけどね。でも身体に負担が大きすぎるわ?かわいいのだから、痩せたらきっと恋ができるわよ。」

「先生・・・・・・・きゅん・・・・・。」


 45歳の煌冷香は、診察を終えて歩きながらこう思っていた。


(先生、、私があと少し痩せたら、付き合ってくれるってことかしら。・・・好き。)


 何もかも上手く行かない人生を送っていた煌冷香は、自己肯定感が低く、ちょっと優しくされるだけで好きになってしまうようになっていた。この自分の未来のやりとりを、自分のことのように、そして他人事のように観ていた12歳の煌冷香。


 こ、これは、、ひどい。きっと今の私が原因ね、、。このところ、あらゆるファーストフードを制覇しようと食べ過ぎていた。前は夕飯を食べるのがきつかったけど、今は軽々と食べられるもの、、。


 やめなくてはいけない。間食とは名ばかりの、、1日4食生活をっ!!ありがとう、モイラ。目が覚めたわ。あらやだ。夢の中なのに目が覚めたなんて。笑


 それと、、冷麺?カルビクッパ?食べたことがないけれど、すごく美味しそうだった。あれだけは食べてみたいわね。よし、明日の放課後はあれを食べに行こう。そしてそれを最後に、、ダイエットよ!!



 ----------------翌日、放課後。


 煌冷香はお嬢様中学校の制服を着たまま、大久保の韓国街へと繰り出した。そして、冷麺とカルビクッパを平らげると、メニューを見て、「次はこのサムギョプサルとポッサムね。」と決めた。


 3キロ増えていた煌冷香。プラス2キロしたこの日から、思ったよりダイエットは簡単ではないという知識を得ることになるのだった。


 煌冷香の悟りの旅はまだ続く。

 

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