第17話 きょんちゃん師匠降臨

 煌冷香はファーストフード店のテーブルに着くと、周りをキョロキョロしながら食べ方を確かめた。


 ふんふん。。皆、手で食べてる。この包み紙をめくってアーンすれば良いのね?その前に、思わぬ収穫だわ。初めて炭酸を飲むことになるとは。しかも、あのコーラよ、、。マミー、ダディー、ごめんなさい。煌冷香は今、約束を破ります。反抗期です!


 煌冷香は、おそるおそる紙コップにストローをさすと、ゆっくりと唇を尖らせて咥えた。静かに、ゆるやかに吸い上げると、口の中にコーラの炭酸が広がった。シュワッチ。


「!!!!!????」


 な、なんでしょう、これは。い、痛いっ!いや、我慢できる痛み、、。なんという刺激っ!!も、もう一度、、ごく、、うわっ!あまいっ!ま、待って!ごく、ごく、、こ、これは、、今までに感じたことのない、、爽・快・感っ!!


「こんな誘惑がこの世にあったなんて、、マミーがダメと言ったのも頷けるわ。。立って私、毎日来てしまいそうだもの。。」*まだ自動販売機でコーラが買えることをイマイチわかっていない煌ちゃん。


 ごくり。。飲み物だけでこの刺激。。ハンバーガーを食べたら私、、どうなってしまうか、、わからない・・・。自分が恐い・・・。


 ゆっくりと包み紙を開き、ハンバーガーの端っこを覗き込む煌冷香。バンズ、、パテ、ピクルス、、そしてケチャップにチーズ。匂いだけで気絶しそうな煌冷香。


 ぱく。少しだけかじると、ゆっくりと大人の歯で噛みしめる。もぐもぐ、、ごくん。


 はぁぁぁぁぁっ!!な、なんて美味しさっ!一流ホテルでも食べたことがないっ!!大変、、売り切れる前にもう一つ買っておかないと!!その前に、、なぜマミーはこれを食べてはいけないと言ったのかしら。もしかして、、マミーもこの美味しさを知らないのではっ!!買って帰って食べさせてあげたい、、でももし、このことがバレて外出を禁止されたら、、二度と食べられなくなってしまうっ!!!*大葛藤


「困った、、悩んでも立ち止まってはいけないと教わってきたけど、どうにも正しい答えにたどり着かない・・・。」*え、そんなに?


 煌冷香は無意識に口の中にポテトを放り込んだ。そして、あまりのグルタミンのうまみに悶絶していると、、


「煌ちゃん!煌ちゃんだよね!?」


「えっ!しまった、みつかってしま、、あっ!!きょんちゃん!!」


 ポテトを噛みしめながらのたうち回っている煌冷香に声をかけたのは、小学校で仲良くしていた前園恭子、きょんちゃんだった。


「煌ちゃん!やっぱり煌ちゃんだ!!久しぶりだね!」

「きょんちゃん!!こんな所で会うなんて!!あ、そちらの方はお連れ様?」


 きょんちゃんの隣には、きょんちゃんと同じ制服を着た女の子が。


「あ、うん。えっと、実は彼女なの。」

「初めまして。恭子の小学校のお友達?」

「うん、そう。仲良しだった煌冷香ちゃん。」


 彼女・・・?ぱちくり。煌冷香の思考が追いつかずしばらく固まる。良く見ると、2人は手を繋いでいた。


「か、彼女というのは、、お付き合いをしていると言うことですか?」

「う、うん。びっくりするよね。そうなの。」


 IQ140の煌冷香。今ここで、脳内の神経細胞に何らかのスイッチが押された。今までなぜか気づかなかったことに気づく、きっかけが訪れたのだった。


 彼女、、。女性の恋人、、きょんちゃんは女の子。恋人も女の子・・・。あれ?恋人ってなんだっけ。好き合ってる者同士が交際すること・・・。


 女性同士だなんて・・・。あ、あれ?何かがわかりかけたような、、今、、待って?私って、あれ?


「おーい、煌ちゃん??」

「・・・はっ!?あ、きょんちゃん!えっと、良かったらご一緒しない?」

「じゃあ、ちょっとだけ。良いかな?」


 きょんちゃんは彼女に煌冷香とここに座って良いか尋ねると、彼女が頷いたので椅子に座った。煌冷香は一旦、思考を止めてきょんちゃん達と会話することになったのだ。


「煌ちゃん、学校が離れたら連絡取らなくなっちゃったね。元気だった?」

「うん、私も連絡しなくてゴメンナサイ。きょんちゃんが元気そうで嬉しいわ。」

「私の彼女、同じ部活の郁ちゃんっていうの。」

「郁美です。よろしくね、きらちゃん。」

「よろしくお願いします・・・。そ、その、もし宜しければ、2人の馴れ初めなど伺っても・・・。」

「えっとね、クラスが違うんだけど部活でだんだん仲良くなって、皆でいるより2人でいるほうが楽しくって、、お互いに気がついたら好きに、、って感じかな!」

「違うよ、恭子。私は最初から恭子が好きだったって言ったでしょ?」

「えへへ、そっか。」


 見つめ合う恭子と郁美。頬を赤らめ、恭子の目が郁美を好きだと物語っていた。


 何かが繋がった煌冷香。いや、もう気づいていた。自分の恋愛対象は女性だと言うことに。


(そうか。そういえば私はずっと、女の人しか好きになってないわ。。それにしても、ポテトが美味しい・・・。)



 続く。


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