第15話 無類の女好きだと自認する日は近いキラちゃん。

 煌冷香。12歳。中学一年生になっていた。*お陰様で歯は全部生えたよ。


 小林先生との別れは寂しかったが、卒業と同時に忘れることが出来るくらい幼くて淡い恋心であった。きょんちゃんとは今も仲良くしているかというと、、中学が別々になってしまっていた。ずっと友達でいようと約束しあいはしたが、日々の生活に忙殺されて連絡は取らなくなっていた。


 煌冷香は、私立のお嬢様が通う女子中学に進学していた。その理由は煌冷香の素行にあった。


「煌ちゃん!これは一体何なの!!?」

「あ!マミー!それはその…。」


 小3にして恋愛観を学ぼうとした煌冷香は、少女漫画の恋愛ものを読み漁っていた。きょんちゃんや他のクラスメイトから借りた男女ものの恋愛漫画である。


 母親にバレてしまってからは、放課後の教室で読み漁っていた。しかしセレクトが悪かった…。非日常的なシチュエーションの展開ばかりだったのだ。


「うーん、読んでいて思うケド…男子の良さが全くわからないわ。なぜ虐められていた男子を好きになるのかしら…。これも…、オラオラ系?なにが良いのかしら…。何で毎回ぶつかって転ぶ度に胸を触られるの?ラッキースケベって、、恐怖でしかないわ、、。この主人公、、定職に就かずに旅をしながら喧嘩を!?伴侶に選んだら不幸にしかならないわ…。」*少年漫画も読んでしまった煌ちゃん。


 生まれたときから女性しか好きになっていない煌冷香は、癖の強い男子主人公の良さがちっともわからなかったのだ。


 そして、煌冷香の帰りが遅いことが家政婦によって母親にバレた小5のときだった。


「煌ちゃん…あなた、やっぱり庶民の学校なんかに行くから…。すっかり悪い道に引っ張られてしまったのね。中学はママの勤めている大学の附属中学校に受験してもらうわよ!」


「ええ!そ、そんな!せっかく友達もたくさんできて庶民の生活にも親しんできましたのに!!嫌です!」


「今度ばかりはパパが味方してもダメよ?恋愛のことばかり考えるようになってしまって…。品のある女子中学に進学して、淑女としてイチからやり直さないと!」


「ん?・・・女子中学なの?」マジ?


「そうよ。家柄のちゃんとした女子だけが行くところよ。男の子とお付き合いなんてまだ早いわ。」


「わかりました!!行きます!!受験ですね!!頑張ります!!」*手のひらがひっくり返った煌ちゃん。


「わかってくれたのね。もう男の子のことばかり考えてはダメよ?」


「はい!わかりました!もう1ミリも未練はありません!」*意図せず親公認の女好きになった瞬間。


 煌冷香は思った。


 え。嬉しい…。やっとあの野生児たちと離れられるわ。下品な言葉を口に出すだけでなぜか面白がっている男の子達と、もう一緒にいたくない。


 ああ…良かった。もう給食のコーヒーゼリーをせがまれずに済むのね…。上履きも飛んでこないのね!!野球選手のカードを自慢されないで済むのね!!


 もう、ケミカルでノンオーガニックなのに野生味溢れる庶民の暮らしは理解したわ。私、戻ります…。品格のある世界へ…。モイラ、、私、もういいよね?


 そうして煌冷香は、難なく中学受験を突破し、ルイボスカルダモン女学院の中等部に進学したのだった。ハーブティーの美味しい中学として有名だ。スローガンはノンカフェインノンだら乗るな!


「ふふふ、今日も無事に楽しく学校生活を終えることができたわ。ああ、女子だけの世界ってなんて心地良いのでしょう。皆さん、品格があって過ごしやすいわ。」


 煌冷華は電車通学をしていた。世間を知るために、知識を増やすために。最初の1ヶ月は家政婦がお供をした。切符の買い方、路線地図の見方、車内で起こりうる危険や、なぜか車内で起こりうるときめきまでを教わった。


(車内で困っている女性がいたら助けるのよね。そこでラブロマンスが生まれる・・・。)*純粋に少し間違えながら成長している煌ちゃん。


 しかし、そんなに上手く電車煌ちゃんになれるわけがなく、どちらかといえば自分自身が危ない目に遭うことの方が多かった。


 そう、煌冷香、12歳。絶賛かわい子ちゃんに成長していたのだった。


(入学して半年が経つ。。朝の通勤ラッシュは痴漢に合うからといって車で送られる事になったけど、、この帰りだけは一人で電車に乗れる。ふふ、今日は思い切って、隣の駅で降りてみようかしら?)


 隣の駅前を少し一人で歩くだけでも大冒険な12歳の煌ちゃん。電車が止まると、ゆっくりと一歩ずつ、ホームへと進む。


「いざ。冒険の旅よ。今日こそ、あれをやってみせる!」



 何だろ。。続く。


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