第8話 歯が生えても滑ぜちゅが悪かったの。

 大好きな家政婦の草王子さん。小さな頃からずっと一緒にいてくれた。そんな彼女がもうすぐいなくなってしまうと知った煌冷香は、ダディーの膝の上で泣き疲れて眠りについた。


 気がつくと、ベッドで朝を迎えた煌冷香。

「ああ。寝てしまったのね。歯を磨かずに寝るなんて、レディーとして失格だわ。せっかく生えてきたばかりの歯を大切にしないと。。・・・それにしても、草王子さん。。本当にもう会えなくなってしまうの?」


 そう思うと同時に、煌冷香のくりくりした目には涙がいっぱい溢れてしまった。

「ぐじゅっ、、うぅ~。今泣いたらダメ。学校に行かなくちゃ。。女は海よ。強いのよ。。」


 頑張って涙を堪える煌冷香。その時、ふと思いだしたのがモイラの言葉だった。

「困ったときがあったら、朝のテレビ番組の占いを観なさい。私たちのお友達が、あなたにヒントをくれるわ。」


 そうだ。テレビの占いを観なさいと言っていたんだ。

「お願い!草王子さんを辞めさせないで!うなないしさんたすけて!」*滑舌が悪い煌ちゃん。

 そう願うと、煌冷香は自分の部屋から一目散にテレビのあるダイニングルームへと走った。しかし、煌冷香は母親に厳しく育てられている。テレビを観るには許可が必要だ。煌冷香のIQ140が瞬時に言い訳をはじき出す!タタタン、パーン‼


「おはようございます、マミー!」

「おはよう。煌ちゃん。そんなに急いでどうしたの?」

「あのね、マミー。クラスのお友達の間で、朝の占いの話題が沢山出てくるの。その占いだけ、テレビを観てもいいかしら?公家の方までその占いの話をするのよ?」

「そう。お友達の会話からあぶれてはいけないわね。いいわよ。」

「ありがとう、マミー!」


 煌冷香は、初めて朝起きてすぐにテレビをつけた。そして新聞の番組表を見る。どのチャンネルでその占いが観られるかはモイラから聞いていない。


「あった。世界一の占い師、、ブラウンマッシュルーム占い・・・。」

 煌冷香がチャンネルを合わせると、ちょうど占いが始まる前だった。そして数分待つと画面には、VTRで出演しているローブを着てフードをすっぽり被った、顔の見えない怪しげな占い師の画面に切り替わる。


「はじまった。お願い、私にヒントをください。腐乱マッシュルーム様・・・。」


『やぁ、おはよう。オーディエンス。ブラウンだよ。今日の開運アクションは、新しい環境だ。自分から探さなくても、新しい環境に行かざる得なくなるであろう。でも大丈夫。それが君の運命である。別れがあれば出会いがあるよ。煌びやかに。。』


「わぁ。私の名前を言ったわ!本当に私にヒントをくれたのね!」


「煌ちゃん。そろそろ学校に行く支度をなさい?」

「はい、マミー。すぐに支度します!」


 こうして、煌冷香は占いの言葉を忘れないようになんども反復して、学校へと行くのだった。


 そしてこの日。煌冷香の父は、煌冷香と婚約したいというクラスメイトの父親に、断りの電話を入れた。そして、大きな取引先との関係が解消されてしまったのだった。


「ふぅ。まさかこのくらいで関係を切られるとは。まぁ、このくらい構わない。煌冷香には婚約者なんて必要ない。好きな人と結ばれて欲しいからね。」


 煌冷香の父親は、いわゆる、マジで優しくてかっこいい、ただの金持ちのイケおじだった。


 続く。

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