第7話 年上包容力系お姉さんが好きな煌ちゃん 

 その日の晩。煌冷香に衝撃的な事件が起きた。


「煌冷香。ちょっと話があるんだよ。いいかな?」

「うん?なぁに、ダディー。」


 普段、優しい顔のダディーが神妙な顔つきで話があると言ってきた。煌冷香はあまり良い話ではないのではないかと、6才にして悟った。そして向かい合って椅子に姿勢正しく座る。


「実はね、君の同級生にパパの会社の取引先の息子さんがいてね、、。君と婚約関係を結びたいと言ってきたんだ。」

「え!?そういえば、今日そんな話をしてきた子がいたわ。あの方なのね。ダディー、ごめんなさい。私は嫌だわ。だって、クラスの男の子は皆、自慢話ばっかりなんだもの。」

「そうか。少しでも気に入る要素があるならと思ったが、、君に嫌なことをさせたくなんかないんだ。わかったよ、気にしないで?煌冷香。」

「うん、、だけど、ダディーは大丈夫なの?お仕事ができなくなったりしない?」

「大丈夫だよ。パパは仕事より君が大事だ。上手く断るよ。」


 心配そうな顔をしている煌冷香を安心させようと、大きな手を広げて待ち構えるダディー。煌冷香はすぐにダディーの膝の上に乗ると、温かく抱きしめられて笑顔を戻した。


「男の子達、皆自慢ばっかりなの。なぜ、自分の良さを語らずに持ち物の話ばかりするのかしら。だったら私、物と結婚致しますけどと言ってしまいたいわ?」

「うーん。あのね、男の子達は、好きな女の子の前ではかっこつけたくなるものなんだよ。パパだって、煌冷香の前ではかっこ良く思われたいからそうしているよ?」

「ダディーはいつだってかっこいいよ?マミーもそう言ってた。皆、ダディーみたいだったら良いのにね?」

「そうかい、ありがとう。煌冷香は好きな男の子はできそうにないのかい?」

「うん。草王子さんと居るときが一番楽しい!大きくなったら草王子さんと結婚するのよ!」

「・・・そうかい。煌冷香、、かわいそうだけど伝えなければならない。草王子さんはね、今月で仕事を辞めてここには来なくなるんだ。ごめんね?」


 煌冷香は一瞬、ダディーが何を言っているのかわからなかった。しばらくして、バッとダディーの顔を見上げると、悲しそうな顔で訴える。


「ダディー、、どうして?どうしていなくなるの?嫌よ、お願い。草王子さんを辞めさせないで?」

「違うんだよ、煌冷香。草王子さんが都合で働けなくなったんだ。理由は草王子さんが秘密にしているからわからないけどね。」

「そんな、、どうしてもここにいられないの?明日はくる?やめないでって言わないと!」


 ダディーは草王子さんが結婚することを知っていた。しかし、幼い煌冷香が草王子さんと結婚すると言ったのを聞いて、今言うべきかと躊躇った。


「煌冷香。草王子さんは君と離れたくないんだよ。だけど、仕方なくここを辞めるんだ。だから、あまり無理を言って悲しませてはいけないよ?」

「だって、、だって嫌だもん。。うぅ~、、ヒック、ヒック、、」

「ああ、ごめんね。でも今泣いても、草王子さんの前でそんなに泣いたらいけないよ。草王子さんだって泣いてしまう。大好きなら、またいつかそばにいられるときがくるかもしれない。」

「うわーん!いやだー!やだやだー!」


 こうして、6才の煌冷香は、泣き疲れて父の腕の中で眠った。これが、年上のお姉さん好きな煌冷香の誕生。そして、58歳には大の年下好きとなる煌冷香の運命はいかに。。

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