第5話 そりゃ、庶民と価値観違うわけだ。
4月。煌冷香はとうとう小学校に入学した。
上流階級で家庭で育った子ども達が通うその小学校の朝は、校門の前で、運転手に送られた子ども達が車から降りる姿が華々しく賑わう。
「おはようございます。西園寺さん。」
「おはようございます。霧ヶ峰さん。」
どの子どもも例外なく、親は企業の社長や地主などの権力者だ。子ども同士の付き合いの背景には親同士の付き合いが反映される。どの子も家名で呼び合うのだ。
入学して数日が経った。友達も出来た。勉強も順調な煌冷香。
(アトトトス様が言っていたこと。。私は庶民の学校に通うと言っていたわ。だけど、現に私はこの学校に通っている。あの出来事はやっぱりただの夢なのかしら?
友達だって沢山出来たわ。特に不自由はない。このままで不都合が起きるようにはとても思えないわ?もう一度話せたら良いのだけど、、モイラは1人1回しか会いに来てくれないと言っていた。)
授業が終わり、放課後を迎えると、煌冷香のもとに数人のクラスメイトがやってきた。
「西園寺さん!あなたのそのツインテール、とっても素敵ね。メイドさんがやってくれるの?」
「ううん。母が教えてくれて、自分でやっているのよ。身の回りのことは自分で出来るようにと母の教育方針なの。」
「わぁ、すごい!自分でなさるのね!!私は着替えもメイドに任せっきりよ。見習わなくてはいけないかしら。」
「いいえ。近衛さん。あなたの髪型もとても素敵だもの。」
「ありがとう。今度是非うちに遊びにいらして?」
女子だけでおしゃれについて話す時間はとても楽しい。
だけど、煌冷香には1つ困ったことがあった。
「西園寺さん。君の家は古美術商だと聞いたけど、僕の家にある絵を見に来ないかい?時価数億円の絵画が沢山あるからね。君のお父様が喉から手が出るほど欲しがるかもしれないよ?」
まただ。煌冷香はもうこの手のマウントにうんざりしていた。
「それは素晴らしいですね。是非機会があれば。」
「!!!じゃあ、今日はどうだい?」
「あいにく、今日はピアノのお稽古があります。あと人様のお宅にお邪魔するとなれば、母に聞いてからにしませんと。」
「そうかい、わかったよ。じゃあ、聞いてみてくれ。」
トボトボと帰っていく同級生の男の子。どうも男の子は見栄をはったり自慢をするのが好きみたい、と煌冷香は面倒に思っていた。好きな女の子にかっこいいところを見せたい男の心理を煌冷香は知らないのだ。だってまだ6歳だし。前歯も生えそろってないし。そしてもう一つ、男の子の嫌なところがあった。
「ねぇ、西園寺さん。」
「なぁに?鷹司谷くん。」
「僕の家は、君の父上と取引をしているらしいんだ。君はもう婚約者を決めているの?」
「あら、そうでしたか。父がお世話になってます。婚約者ですか?私の家は婚約者を作れとは言われたことがありませんが。」
「そうなんだ!じゃあ、僕から父に言ってみる!またあとでね!」
「ええ?何を言ってみるの??」
実は煌冷香は、この学校で噂になっていた。ツインテールのかわいい女の子がいると。女神すら恋をするかわいこちゃんだったのだ。この学校の男の子で、婚約者を作らないといけない家の子は、是非、西園寺煌冷香と!!と目を光らせていた。
そしてこの時、すでに煌冷香はまるで男の子に興味がなかったのだが、、本人はまだ、気づいていなかった。
「帰ったら、家政婦の草王子さんとお菓子を作りましょう♪」
続く。
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