つれますか?

 つれますか?

 突然、そう声をかけられた。

 振り返ると、青白い顔の男が俺の背後に立っていた。

 他にもこの場所を知っている人がいたのか。

 このつり場は小さな橋の下で目立たないから、ゆっくりと釣りを楽しめる。

 しかもよく釣れる。

 まあ、そうか。俺だけの場所じゃないもんな。

 俺は「えぇ、まあ」と気の無い返事を返した。

 すると、その男は「それでは失礼して」と言い、欄干に輪っかのあるロープを引っ掛けた。

 突然のことに、俺がぽかんとしていると、その男は何のためらいもなく、ロープの輪っかに首をかけると、川の方へと身を投げ出した。

 俺は咄嗟のことに目を逸らしたが、入水した音は聞こえなかった。

 恐る恐る、川底を見てみると、そこには白骨死体をつついているたくさんの魚がいた。

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