寒いんだ
十年前に消息を絶った父が、突然帰ってきた。
当時の身なりと雰囲気のまま、父は私に「風呂は沸いているか」と言ってきた。
父は「早くしろ。寒いんだ。熱ければ熱いほど良い」と言った。
昔から横暴な父は、家族によく暴力を振るっていた。
そんな父が突然帰ってきたのだから、私は震えが止まらなかった。
すると、突然母がやってきて「風呂に入ったら出て行ってほしい」と父に言った。
父は、母の顔を睨みつけ、小さく「ああ」と言った。
父は熱い風呂にざぶん、と入ると心底気持ちよさそうにため息をついて、そのまま氷のように溶けていった。
後日、バラバラにされた父の遺体が、我が家の庭に埋められているのが発見された。
雪が降り積もる、寒い日のことだった。
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