次も見て

 残業が終わり終電で帰っていた時のこと。

 進行方向を見ていると、通過駅で女性が電車に飛び込んできた。

 私は反射的に目を背けた。

 確かにぶつかったはずなのに、衝撃も音もない。

 目を開けると、体中血だらけの女性がこちらを見ていた。

「ねえ、見た? 見た? 見た?」

 女性はどこか嬉しそうに私に語り掛ける。

 見てない、と答えると残念そうに消えていった。

 後日、同じ時間の同じ電車に乗ると、また女性は電車に飛び込んできた。

「ねえ、見た? 見た? 見た?」

 今度は「見た」と答えた。

 女性は嬉しそうに「次も見て」と答え消えていった。

 俺はもう二度と見たくないので、電車通勤を止めた。

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