形見の日記

 友人が病気で亡くなった。

 四十九日が終わり友人の両親から、形見分けとして日記を貰いました。

 友人は病の床に伏しながらも亡くなる直前まで日記を書くことをやめなかったそうです。

 人の日記を貰うのは少々憚られたものの、生きた証だ、という友人の両親の言葉を受け、譲り受けることにしました。

 私は友人の残された一日、一日を大切に読み進めていきました。

 しかし、いつからか、頻繁に紙で指を切ることが多くなりました。

 それでも読み進めていくと、気をつけていてもすぱすぱと指を切ってしまいます。

 終いには、本に触れるだけで指が切れ、私の血で本が真っ赤に染まってしまうほどです。

 友人の日記の最後のページはまだ読めていません。

 

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