煤けた細い棒

「誰か呪いたいやつはいるか?」 

 繁華街を同僚と歩いている時に、突然そんなことを言われた。

 ぼろきれを身にまとった、初老の女性だった。

 私が「上司だ」と答えると、その女性は煤けた細い棒のようなものを手渡してきた。

「それを砕けば呪いたい相手の命は終わる。だがお前の命も終わる」

 私が手渡されたものに目を止めている隙に、その女性は忽然と姿を消していた。

 後日、上司が事故で亡くなった。

 机に入れておいた煤けた細い棒は粉々に砕けていた。

 私が砕いたわけではない。

 さらに数日後、同僚が突然死した。

 葬式でのお骨上げの際に、同僚の指の骨は真っ黒に煤けていた。

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