　初夏の夜の事だった。

　アパートの部屋でぼぅっとテレビを見ていると、かつんかつんと何かがぶつかるような音がした。

　テレビからではないようだ。

　窓から音がする。

　部屋の光に惹かれて寄ってきた虫か何かだろう。

　かつんかつん。

　しつこく光を求めてくる。

　かつんかつん。

　すぐいなくなると思っていたが、いつまで経っても音は止まない。

　かつんかつん。

　鬱陶しくなってきた私は、殺虫剤を手に取った。

　虫が部屋の中に入らないよう、少しだけ窓を開ける。

　虫はどこにいるのだろうか。

　かつんかつん。

　音が聞こえる。

　どこから？　

　わずかに上のほうから聞こえる。

　ベランダに出て上を見ると上階の住人が私を睨みつけていた。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい