終章

 放課後を迎え由希はクラスメイト達に挨拶を交わして教室を出た。

 つい最近まで、クラスの誰とも話していなかったのが嘘のようだった。

 きっかけは分かっている。

 オーナーとなり、たくさんの事を経験した。

 それで、素直な気持ちを伝えるということの大切さを学んだ。

 だから、話しかけた。驚くほど簡単に級友たちは受け入れてくれた。

 学校を後にして、アイギスの基地に向かう。

 道中でばったりと瑠香にあった。

「あー、由希君。偶然ー」

「うわっと、ナチュラルに抱き着いてこようとするなって」

「えー、いいじゃん減るもんじゃないし」

「まあそうだけど……いや、今日に関しては時間が減るの!急いでるんだ!」

「あ、もしかして……」

 得心が言ったようで、瑠香はすんなりと身を引いた。

「よろしく、伝えといてね」

 アイギスに着くと、ミントに出迎えられた。

「おお、今日も元気で何よりにゃ」

「彼女はどうでしたか?」

「まあ、少し緊張しているようだったにゃ。でも、問題なさそうにゃ」

「そう、ですか」

「お兄ちゃーん」

 突然、背中に何かが突撃してきた。奏だった。

「今日も遊んでくれる?ねえ、私面白い遊び見つけたんだよ」

 そういうと、奏は由希の服の袖に口をあてて、思い切り息を吹きこんだ。

「あつ!めっちゃ熱い!」

「えへへ、すごいっしょ?これは、何の能力?」

「さ、さあ……?」

「ふえっくしょん!にゃあ、お前、猫触ったらちゃんとシャワー浴びろって言っただろにゃ」

 バタバタとうるさい二人に苦笑いしながら、由希はミントの部屋を出た。

 見慣れた地下空間を通り、目的の部屋に向かう。

 やがて、その部屋の扉の前にその前にまひろの姿を見つけた。

「由希、その、お疲れ様」

 まひろは柄にもなく、緊張しているようだった。

「別に、無理しなくていいんだぞ?」

「ううん。そんなことないよ……だって、私がそうしたいと思ったんだから」

「そうか……なら行こうか」

 そして、扉を開けた。

 そこには、彼女がいた。

 気まずそうに、由希と麻尋を見つめている。

 そんな彼女に由希は手を差し出した。

「お帰り、まひろ。そして、ようこそ……アイギスへ」

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アナザーセンス @merbotan

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