第16話 帰るべき場所に
ちなみにキャロルも水着に着替えているけどあんまり目立つつもりもないということなのか、みんなのちょっと後ろで控えている。こう、仕草とかもいつも通りで立ったままうとうとしていた。
学生用水着とか言ってたけど、胸のとこの名札にキャロルって文字が大きく書かれている。
小柄なのも相まって子供が眠さに負けているようで、キャロルの場合は微笑ましさの方が強いかなという感じだ。
ああ。みんなには、ちゃんとそれぞれに思ったところは伝えた。
上手く表現できてたかは分からないけれど。
「ああ――良い。良いですね。主様がしっかり見て下さるというのは……」
クリスティアが天を仰いで、祈るような仕草を見せながらかっと目を見開く。
「主君が気にかけて細部まで見てくれるというのは、素晴らしいことよなぁ。くふふふ」
「それだけでも満足度が高い。ご主人様も、出会った頃より鍛えられてて良い」
「水着になると分かりますね」
「努力の賜物じゃな」
「えっと……ありがとう」
見てそう言ってもらえるのは、確かに嬉しいもの、かも知れない。まだまだ全然だし、ちょっと気恥ずかしいけど。そんなことを思いつつ、砂浜へ出る。
「まずは――日焼け止めから?」
「そうですね。塗ってから海に入っても大丈夫という触れ込みでしたし」
「うむ。主殿の肌を
「だからまずはビーチチェアに横になって?」
えっと。
どうしてだろうね……。守護るって単語の割に肉食獣の群れの前に投げ出されたような感覚になるのは。
「うん。背中側だけ頼むね……」
そう言って僕はビーチチェアにうつ伏せになった。
「うふふ……では失礼致しますね」
「大丈夫。優しくする」
「痛くないからのー」
三人がそんなことを言いながら、手分けをして背中にオイルを塗ってくれる。うん……。顔が熱いのは夏のせいではないです……。
結構くすぐったいけど、オイル自体は案外普通に塗ってくれてる……気がする。軽く触れてくる手の感触は、ちょっと誰が誰のものか分からない。
背中や肩や膝の裏とかに塗ってもらい、自分の手の届く範囲は自分で、と。日焼けに関してはこんな感じで大丈夫かな……?
「それじゃあ――」
「うむ。儂らの背中にも頼むかの!」
マグノリアがそう言って背中を見せるが――え……。何その水着。正面からは割と普通なのに何でそんな背中側は布面積が少ないの……? あっ。そう言えば水着店で何か意味ありげに笑ってなかった……?
「選ぶ時も着替えてからも背中側を見せないように立ち回っていましたね?」
「しかも先に塗ったから断りにくくしている。策士」
「くくく。物事は裏まで見なければいかんぞー?」
「ふむ。……ここはご主人様に塗ってもらう範囲を平等にするというのは如何でしょう?」
「それ良い」
「くっ! 多数派工作か!」
「平等に、ね? うん。キャロルも入れてみんなで一人ずつ同じぐらいの範囲を塗ろっか?」
「何ッ!?」
僕の言葉に目からハイライトが消えるマグノリアと、自分を指差して首を傾げるキャロル。頼むねキャロル。人助けだと思って。
「ふ、ふふ……ここは痛み分けということにしておきますか」
「ご主人様も中々やる」
そうやって僕は何とかダメージコントロールに成功した。いやまあ……結局4人で手分けしたものの全員に塗ったんですけどね……。
サンオイルを塗った後は、みんなと海に入ったり砂浜で遊んだりすることになった。
「ご主人様は泳げる?」
「うん。僕を育ててくれた人達に習ったよ。僕が王宮に来る前に住んでたとこは川も近かったから、泳ぎ方は覚えておいた方が良いって」
「それは……良い教えですね。では、一緒に泳ぎましょう」
「泳ぎ疲れたら浮き輪も用意するからのー」
海に入って見ると、明るい陽射しに冷たい海が心地いい。川で泳ぐのとは塩の味とか波もあって、川で泳ぐのとは結構勝手が違うけれど……寧ろ川よりも泳ぎやすいかな? プライベートビーチだからかも知れないけれど、潮の流れや波も穏やかだからね。
リンネが身体をくねらせて透き通る水底から僕を見上げて手を振ってきたり、クリスティアが僕の手を引いてくれたりしてくれた。
マグノリアも小さな波を作り出してその上に乗せてくれたりして。
その内にリンネが影で水上を滑走したり、クリスティアが水面を魔法無しで走って見せたり、マグノリアが渦巻きに乗って飛んで行ったり……なんだか途中から超人隠し芸大会みたいになっていたりもしたけれど。
少し泳ぎ疲れてきたら休憩も兼ねて浮き輪を魔法でマグノリアに作ってもらって、波間に浮かんで漂いながら海水を掛け合ったりとか、ビーチチェアに寝転がって冷やした果実水を飲みながら景色を眺めたりとか。
キャロルが食事や飲み物を作ってくれた。それが終わったら遊んでも構わないと伝えると、キャロルは砂遊びに興じていた。
いや、字面だけなら可愛らしいけど、造形が上手い。砂を湿らせて固め、結構繊細な立体物を作ってみせてくれた。
「おー。上手い」
「夢魔じゃからなー。イメージを形にするのは得意なんじゃろう」
細身で翼と尻尾を持つクリーチャーの砂像を作って「友人ですー」とか言ってたけど。夜精仲間とかだろうか……。
「インプですね。夜精の一種で、さほどの危険ではありません。悪戯好きなので注意は必要ですが」
なるほどねー。キャロルはキャロルで、夜精仲間の交友関係を持ってるみたいだ。
そんな調子でボール状の浮き輪を作ってもらって投げ合ったり、大きなボートみたいな浮き輪を作ってみんなで乗ったり海水を掛け合ったり……。みんなとの海水浴を一日満喫させてもらった。夕焼けに染まったプライベートビーチも結構雰囲気が変わって、綺麗なものだった。
そして、その夕陽に染められた海を見る、みんなの横顔も。
綺麗な風景を眺めて楽しそうにしているみんなの姿。吹いてきた風に揺れる髪。景色に見惚れるように微笑んでいる姿。それが、とても絵になって。その光景を、綺麗だなって思った。
「あら。どうかなさいましたか?」
みんなの姿を見て、僕が少しぼうっとしていたことに気付いたクリスティアが、こちらを見て言った。
「えっと。みんなも楽しそうだったから良かったなって思って。気兼ねなくこうやって過ごせるのって、連れ去られた人達を、みんなが無事に助けてくれたお陰だし」
「うふふ……。それもセシル様の想いを受けてこそのものです」
「安心して動けてこその良い職場?」
「むふふ。今後ともよろしくのう?」
「楽しい職場ですー」
そんな風に言ってくれるみんなに、僕も笑って頷いた。そっか。安心して動ける、か……。これからもみんなからそういう風に思ってもらえるように頑張りたいね。
それから数日。僕達は館に滞在し、日中はプライベートビーチで過ごしたりと、楽しませてもらった。
漁師達がお礼として持ってきてくれた魚介類を受け取って、それを網焼きにしてみんなで食べたり。ボート型の浮き輪に乗って、のんびり魚釣りをしたり。
リンネは――その……王都や港町で買ってきたお酒を結構な勢いでカパカパ飲んでいた。休暇中ということでいつもより酒量も多い気がするけど、クリスティアとマグノリアも酒盛りにちょっと付き合っていたりする。僕は王国法だとまだお酒が飲めないので遠慮してるけど。
スキルで少しだけ過去の想いに触れたからだと思うんだけど。ああやってリンネがみんなとお酒を飲んで、楽しそうにしてるのを見るのって、僕も嬉しくなるな。
リンネだけじゃなくて。みんなと出会ってから時間も経って、少しは色々なことが見えてきた……ような気もするんだ。みんなの、思ってることとか。
僕は――みんなが褒めてくれるほどのものじゃない。どこにでもいるパン屋の息子だったし、そのつもりだった。王子になってもそれがいきなり変わるようなものじゃないし。
でも、みんなは違ったんだ。きっとそんなどこにでもあるようなものだって「普通」じゃなかった。平和とか、普通とか、ささやかな自由とか。そういうのを僕には想像もつかないぐらいに強い気持ちで望んでた。
だから僕に対してはそういう平凡なところとか、今の状況とか、そういうのをかけがえのないものだと思ってるんじゃないかなって、そう感じる。
でも……そうだね。……僕がみんなに対して本当に何か出来る事があるとするなら、みんながそうやって安心できるような僕のままで、一緒にいられるようにする事なんだと思う。
みんなが影響受けて欲しくないって思ってる外戚とか、汚職してる人達だとか、そういう人達に悪い影響は受けないよう。向かい合っても問題ないようにしながら、っていうことだ。
それに、僕だって出会ってから時間も経って、みんなが単純にからかってるだけじゃないって気付く部分もあるしなあ……。
将来がどうなるかなんて全然わからないけどさ。どんな形であっても、みんなが望んでくれるのなら。その時のために、ちゃんとみんなと一緒にいられるように頑張ろうと思うんだ。
休暇中は中々賑やかながらも結構のんびりとさせてもらって、帰る時も代官さんや漁師さん達を始めとした今回知り合った人達が見送りにきてくれた。これは結構嬉しかった。声援で見送られて、なんて初めての事だったからなあ。
そうやって僕達の海魔退治と休暇は幕を下ろし、王宮に帰った僕達は報告のために王様に謁見を申し出たんだ。
「――海魔の討伐。そして捕らわれていた漁師達をも見事救出したという話、既に聞き及んでおる。実に大義であった」
いつも通りリンネが姿を隠し、僕とクリスティア、マグノリアが顔を出すと、王様は上機嫌な様子で僕達を迎えたのだった。
謁見の間は宮廷魔術師や近衛も同席していて、僕達だけではないから、上機嫌で褒めてもらえたとしても素の反応はできない。王様も人目や立場があるしね。この場では思ってても言えない事って言うのはあるんじゃないかなって思う。
「勿体ないお言葉です。今回は幸運にも逃げるサハギン達を追跡することができましたので、彼らの拠点を見つけることができました。捕らわれた人達を生かしておくために、中には空気もありましたので、僕達も優位に戦う事ができました。その点も運が良かったと言えるかも知れません」
「ほう。海魔の拠点に空気か。陸上の者から攻め込まれることを想定していないのかも知れんな……」
それはあるかも知れない。サハギン達は半魚人だから、空気のある場所でもある程度活動できるし戦える。海魔同志や海に住まう種族、魔物との戦いみたいなものを想定した場合、逆に祭壇のあったあの広間は、サハギン達にとって有利になるんじゃないだろうか。
逆に陸上の生き物をあの場所で迎え撃つことは想定してないんじゃないかな。広間に向かうまでは、海水で満たされてたし、普通はそこで終わるもんね。今回は……サハギン達にとって相手が悪すぎただけで。
でも王様への報告は他の人の目もあるし、あんまり事細かに報告できないんだ。
みんなのことを警戒させたくないって言うのが何よりの優先事項。だから、嘘にならない程度の内容で、戦果を盛るような報告もしない。
一度みんなに聞いたことがあるんだ。僕を守るために力を隠しているのは、低く見られてしまうようで不満じゃないのかって。でも、みんなは首を横に振った。
「出る杭は打たれるって言葉がある」
「光が強くなれば影もまた濃くなるものです。必要以上の耳目を集めないのはセシル様を守る上で必要というのもありますが……私達もまた、それを望んではいないのですよ」
「そも、それで何をするのか、という話よな。そういうのは目的とも手段ともしとらんで、間に合っとるからのー」
「ただ、ご主人様がそう言うってことは、私達を高く評価してくれてるってこと。うっへへへ……」
「くふっ。嬉しい事ですね」
「ぐふふ……。相手によっては喜ばしいことよな!」
……ということだそうです。後半部分の目を輝かせながらの言葉はともかくとして……。この辺はみんながちょっと周囲と比べ物にならない実力があるからって言うのもあると思う。その気になったら何でもできちゃうもんね。
「なるほどな。海魔の問題が大きくなる前に討伐した此度のことは高く評価している。そなたの働きには何か報いねばならぬと思うが……セシルよ。そなたは? 何か望みがあるか?」
功績への褒美かぁ。うん……。そうだね。僕の望みっていうのなら、このぐらいのものだ。
「はい。僕は――陛下の御配慮により変化をした今の環境を、とても有難く思っています。叶うのでしたら、これから先々もみんなと共に歩んでいける静かな環境で、僕を支えてくれる人達に応えられるよう、研鑽を積む日々が続くことを望んでいます」
そこには二つ意味を込めてる。勿論それを、将来もみんなが望んでくれるなら、なんだけど。
僕がそう答えると王様は顎に手をやって、少し思案するような様子を見せた。
「ふむ。では、功績というのならば、クリスティア、マグノリアよ。そなた達はどうなのだ? 望みはないのか?」
王様は僕の返答を受けて頷いてから、後ろで控えるクリスティア達に目を向けた。
「――陛下のお心遣い、望外に存じます。私達の喜びとは即ち、主の喜びにございますれば」
「はいっ! セシル王子様とずっと一緒にいられるのが一番嬉しいです!」
発言を求められた二人が返答する。影の中から「その通り」と小さな声も聞こえるね。
「そうか……ふうむ。ではそれを踏まえた上で、良きように取り計ろう」
「ありがたき幸せ」
「ありがとうございます!」
王様はクリスティアと子供モードマグノリアの返事に、満足そうに笑みを浮かべてうんうんと頷いていた。
それから、王様は僕に目を向ける。少し苦笑しているようだ。
「だがまあ、それはそなた達の望みではあるのだろうが、外から目に見える形での褒美とはならん。信賞必罰は誰の目にも分かる形にせねばならぬからな。うむ。では……そうだな。周囲の人員や今の環境には変に手を加えないというのは勿論として、恩賞と共にそなたの自由にできる歳費の増額を考えておこう。そなたには身の回りに普通の使用人や家臣とは事情が異なる者達がいる。何かと入用なものも増えよう」
おお……。賃金アップみたいな感じかな。これは無駄遣いしてない事とかも伝わってるからなんだろうけど、有難いね。必要なものとか、みんなのモチベーションアップとかに使えればって思う。後、実地訓練って言えば行動の自由が利くというのも今まで通りだ。
王様にお礼を言って僕達は謁見の間を退出した。
はあ……緊張した。側近とか近衛とか、お偉いさんもいるっていうのもあるけど、今回は現状維持をして欲しいっていう言葉に裏の意味を込めていて、僕自身に対する決意表明みたいなところがあったからっていう方が大きい。でもまあ、あんまり態度には出さずに伝えたいことは伝えられたんじゃないかなって思う。
「うふ、うふふふ……。セシル様と同じ気持ちというのは嬉しいものですね」
「うむ。儂らの熱い想いも伝わったということかの!」
「中々良い感じの話の流れになってた」
と、廊下を歩きながらも三人はそんな風に言って嬉しそうにしてるけど。
そうだね。僕も裏の意味を持たせたから。そうとも取れるし、そうでないようにも聞こえる。だから改めて、ちゃんと言葉にして伝えておく必要はあると思った。
「えっと。部屋に戻ったら、少し話をしてもいいかな?」
そう言うと、みんなは少しだけ顔を見合わせから頷いていた。うん。少しレアな反応かも知れないなぁ。
「それで――お話というのはなんでしょうか?」
部屋に戻ってきたところで、みんなと話をする。謁見を申し込んで、順番待ちをして、それが終わって帰って来たらもう時刻は夕暮れ時。外は綺麗な夕焼けだった。
「その。間違いだったりしたら、僕がバカだったって、笑ってくれていいんだけどさ」
んー……。こうやって逃げ道残すのは勇気がないな、僕。
「主殿の真面目な話を笑うようなことはせんよ」
「勿論です。何でも話をして下さい」
「ちゃんと聞く」
リンネも身体を影から出して言う。キャロルが窓の外から目につかないよう、幻影を被せてくれた。
「うん。海魔退治をして、色々思った事があるんだ。みんながどうして僕みたいなどこにでもいるような子供を支えてくれるんだろうって。出会った頃から、不思議に思ってた。でも自分の中で少し答えが出た……ような気がする」
周囲からの扱いが悪い子供だったから、可愛がってくれてるんじゃないかとか。僕のスキルで助かった恩があるからとか。
でも、きっとそれだけじゃないんだと思う。海で思った事を伝える。
「僕がきっとそういう平凡だったから、みんなはそういうのを大切に感じるんじゃないかって、そう思ったんだ」
戦魂顕現で触れた想いもそうだし、妖魔退治にとても手慣れていて緊張なんてない感じもそう。それは、日常が戦いの中に身を置いていたから。
その……時々感覚が違うなーって思う事はあるけどね。でもそこはそんなに問題じゃない。
英雄だっていうのに忘れ去られてしまった。それは報われることがなかったっていうこと。そんな人達に来てもらい、こうして沢山助けてもらい大切にしてもらって、僕に何が返せるんだろうかって思ってて。そこに答えも出た。
「だから僕は――僕はさ。みんなにとって、安心できる場所、みたいな自分になりたいんだ。これまで助けてもらって嬉しかったし、感謝もしてる。だから何か僕からみんなに返せるものがあるのなら、そういうことなんじゃないかって」
「それは――」
「先の事がどうなるかなんて、今の僕には分からないけどさ。でも、どうなったとしても今みんなに伝えた部分はそうでありたい。王様にはああ言ったけど、ちゃんと将来の事も含めて一緒にって言う意味も込めた言葉なんだ。勿論それは……その、みんなが望んでくれるのなら……だけど」
そう言って、みんなを見る。その辺りは、ほんとにからかってるだけとか、可愛がってるだけだったりしたら、目も当てられないんだけどね……。
そんなことを思いながら、祈るような気持ちでみんなの返答と反応を待つ。
少しの間を置いて――。
「ああ――」
クリスティアが、くらりと、眩暈がしたように崩れる。
えっ!? 気絶!?
「大丈夫……傷は浅い。そして……これはすごいこと」
「致命傷かも知れんがの……いや、じゃが……うむ。うむ」
「――ふ……ふふふ……うふふふふ……」
クリスティアが復活してくる。そして、金色に煌めく目を薄く開いて、僕を見てきた。
「ああ……。あまりの事態に感情が振り切れてしまいましたが……間違いなどではありませんよ。私は――いえ、私達はセシル様が自覚なさっていない、セシル様の美点を沢山知っていますが……その全てを含めて安心できる場所であり、私達が帰りたい場所なのです」
「そう。そして、今までの人生で一番嬉しい。私は淡々としてるから、好意を伝えたいって思った人に、ちゃんと気持ちが伝わってて、良かった」
「そうじゃな。儂もこういう形で人に想いを伝えようとするというのは……長く生きてきたが無かったことでもあるからの。自分の事となると難しいものじゃのう。そこを主殿側から踏み込まれるとは……。主が予測を超えてくるというのは素晴らしいことよ」
ああ、そっか。何でもできる人達って思ってたけど。
逆にこういうのってみんなも慣れてないんだなって、ふと思った。
そして、今の返答は僕も嬉しい……。帰りたい場所だって。そういう自分にちゃんとなれるなら、僕はこれから先も、胸を張って一緒にいられるってことだ。
「僕の、勘違いとかじゃなくて良かった」
「勘違いなどではありません。この胸の高鳴りが、どうやったら伝わるのかと考えているところです」
「とりあえず抱き着いてみるというのはどうかの!?」
「それいい」
え。
言うが早いがリンネが。マグノリアが抱き着いてくる。何? 何が起きてるの?
クリスティアも、僕の頭を包み込むように抱きしめてきて――「伝わりますか?」と尋ねてきている。一瞬で顔が真っ赤になったのが分かった。みんなの鼓動はしっかり伝わるけども! 何か色々柔らかさとかも!
「おめでとうございますー」
そんなキャロルの祝福の言葉を聞きながらも、事態の急変に今度は僕の意識が薄れそうになるのであった。
でもまあ……みんなが嬉しそうなのは良かった。問題は色々あるけれど、これから先も、僕はみんなの主として。帰る場所として。ここで頑張っていけそうだって、そう思う。
―――――――――――――――――――――――――――――
これにて第一章終了となります!
英雄再臨! あれ? 君達ほんとに英雄? ~召喚に応じてくれた子達の様子がおかしい件~ 小野崎えいじ @onozakieiji
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