第22話 オフの過ごし方・プレースキック練習

昇格は逃したけど、次のシーズンに向けてやることは多い。

今回は自分のプレーの分析とFKの蹴り方とかです。

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 昇格は自分のミスで逃したけど、次のシーズンに向けて色々と自分のプレーを見直す必要があります。相手は絶対にガチガチに削って来る。怪我に強い肉体を作らないといけない。確かリーグ戦34試合で32得点27アシスト、実家から過去のサッカーノートを取り寄せて見直していました。まあ「こんなん書いたっけ?」みたいな場所は山ほどありますけど。

 得点の割合として流れの中で頭で4割、左右の足で2割、4割が直接FK・PKです。


 実はちびなのに一番得意なのがヘディングシュートでした。マークを掻い潜って、来そうなところにポジショニングする。そういうとき何故か来るんですよねそこに。これは嗅覚的なものでしょうね。

 次に左右の足、これはロングやミドル、ボックス内でドリブル突破、周りを使ってアシストさせて決めたもの。少ないな……。これが印象ですね。あのレベルならもっとできないとダメだ。目指している場所は代表。今のままでは箸にも棒にも掛からない。流れのなかでもっと得点できなければ厳しい。色々と新しいスタイルを模索してました。まあこれは全体練習で精度を上げる必要がある。個人の練習には向いてない。個人でできるものを伸ばす必要がある。


 実はこのオフに僕と契約したいというチームはちらほら出て来ていました。1部~3部までのチームです。プレミアリーグに登録するには『自国の代表での実績』が必要になってきます。過去1年間の代表マッチで何割かの時間出場や選出されたという実績です。なので僕は今のままでは1部リーグ・Division1まででしかプレーできないということになります。

 そして貰ったオファーですが、全て断りました。金銭面などはかなり待遇が良くなりますが、此方は単位取得途中の大学生。一気に環境が変化するのは困る。下手をすると一日サッカー漬けで勉強の時間がなくなる。そういう事情をチームと話して決めていたので、僕の移籍金をかなり釣り上げてくれていました。そしてこの街の人達や雰囲気、監督とチームメイトに学校の友人達、ホストの寸胴オバハンはいいとしてw その街が好きになっていましたしね。

 見出してくれたチームを上位昇格させてみせる。それが僕にとってのチームへの恩返しだと思っていましたし、いきなり環境が変わってうまくいかない選手も多くいます。そうなるのも、そこで監督の構想から漏れてベンチウォーマーになるとかも絶対に嫌です。なのでCC・FCに義理を返さなくては上位であろうと移籍をするつもりはなかったです。

 こういう感覚は日本人ならではなのかも知れません。良いオファーを貰って移籍していく選手も結構いましたしね。欧米では『移籍は席替えの様なもの』と言われる程茶飯事です。それも一つの考えですけどね、合わなければ変えればいい。もっといい席があれば移ればいい。

 ただ僕にとってはこのチームは特別。初めてのプロの経験を与えてくれたチーム。どうせ昇格させたら上位でプレーできる。そう思っていました。そして休学中という縛りもある。まあそういうことで移籍は断りました。


 逸れました。オフの自主トレーニングでひたすらに直接FKの練習をしました。大体ゴールから20~30mの距離で壁の器具を高めに設定し、色々なコースから1日に数百発蹴ります。ゴール枠内へは8割、決まるコースは更にそこから8割といったところでしょうか。

 みなさんはTVでFKが直接決まる瞬間を映像で見たことがあると思います。何で見にくいのに壁を作るのか、速度がゆっくりでもGKが反応出来ずコースに決まるのか。謎だと思います。ちょっとその辺りに焦点を絞ってみましょうか。


 20~30m、20m近辺はキーパーにとってはもの凄く近くに感じます。プロレベルのシュートをドフリーで壁もなしに蹴らせたら、分かっていても止められない。僕レベルの選手でも、ユース時代に計測で時速150㎞くらいは出せる。好きなコースに蹴られてからセーブするのは非常に難しい。だからGKは壁を作って、ニアかファーのどちらかのコースを切って、まあ基本はニアですが、シュートコースを限定するんですよ。壁が防いでくれる前提です。そして壁がない方向にポジションを取ります。

 キッカーは壁で切られたコースに決めるのは難しいんですよ。距離とスピードの調整ができないと壁に当たる。だからと言ってキーパーがいる方向に蹴るとキーパーにパスすることになる。ですからみんな壁を超えて決まるコースを選ぶんですよ。

 ただ蹴る時にも勿論GKとキッカーの間には駆け引きがあります。ニアに壁を超えて蹴るか、敢えてGKのいる方向に蹴るか。蹴り方にも無回転でぶち込むか、カーブをかけてコースに決めるか。ここで問題になるのはキッカーに充分な技術があるかどうか。まあもう何十本と決めているので今更ですが、技術がないやつが蹴ると、壁に当たる、カーブが掛かり切らずにゴールを超えたり枠を外す、威力が弱くてGKに捕られる。まあこれは論外ですが、チームにプレースキックが得意な選手がいるとそれだけで有利ですよね。倒したら直接決められる。怖いですよね、相手からすると。


 じゃあ僕の蹴り方はどうなのか。実際にどう考えて蹴っていたのかをお話ししましょう。ではゴールから見て右斜め45度・距離20m程とイメージして下さい。普通の選手なら利き足の右か左で蹴り方が変わってきます。ですが、僕は両足蹴れるので、GKは僕の助走でどちらの足で蹴るか判断しないといけない。両足で蹴れるってのは有利です。片足でしかプレーできない選手はプレーの幅が狭い。僕が監督なら使わないですね。そんなに甘くない。

 さてじゃあ元々の利き足の右足で蹴るとしましょうか。そうすると目の前の壁を超えてGKから逃げて行く方向へ曲げて蹴るのが妥当でしょうね。ですが、相手GKはそれを一番警戒している。なのでボールを見えなくさせる為に、対角線上に味方を配置、壁が前に出ない様に壁の目の前の位置に数人配置する。そして助走に入るときに何度かフェイクを入れて、GKの重心がどちらに移動するのか蹴る瞬間まで見逃しません。重心が傾いた逆の方向に、ニアなら壁を超えてドロップするボールを、ファーならキーパーが近くでも捕れない様なインステップの弾丸か無回転をぶっ放します。コース、枠内なら、この駆け引きに勝てばまず技術ミスをしない限りは決まります。

 じゃあ30mくらいの距離からならどうするか? ある程度のGKの重心は気に懸けますが、もうわかっていても捕れない位置に、しかもニアサイド一択です。壁を超えて強烈にカーブしてサイドネットやゴールポストギリギリに突き刺さるキックを選択します。イメージ的には中村俊輔がセルティック時代にマンU相手に決めた2発の直接FKがイメージし易いと思います。一応以下にリンク貼っておきます。1本目が近い位置、2本目が30mくらいの距離です。

https://www.youtube.com/watch?v=Q9Rb1qyMJmc


 ね、蹴り方が異なるでしょ? こういう一つ一つのプレーに駆け引きが存在するんです。馬鹿にサッカーはできません。

 じゃあ蹴り方。カーブをかけると一概に言っても、じゃあどうやって?ってなると思います。曲げて落とすにはカーブとドライブの二種類の回転をかけないと変化しません。ボールをインフロントからインサイドで大きく下からとらえ、擦り上げる様に蹴り上げます。大体狙った位置より2,3mズレた位置に決まれば成功です。近距離は強く蹴り過ぎると落ち切らないで枠を外すので注意が必要です。この蹴り方であればカーブとドライブが両方掛けられます。

 では遠距離からのFK。壁を超えても回転しながらゴールに突き刺さる。そんなシュートを撃つのは非常に難しいです。かなりの練習が必要になります。蹴り方はさっきのボールのとらえ方と同じ。ですがここからが違います。擦り上げると言うよりも、そこからボールを押し出す様に回転をかけながら振り抜く感じです。インパクトしたボールとキックの足ができる限り長くくっついているように強く蹴って押し出す。これが一番難しいでしょうね。

 僕もかなりかなーり相当練習しましたよ。何千何万回と。弾丸シュートを回転をかけながら蹴るイメージですからね。そう、フットボールはイメージです。成功する自分をイメージする。イメージした姿に自分を重ねる。成功イメージがなければ成功できる訳ないでしょう? 成功のイメージをしっかり持っている選手ほど上手いです。これは間違いない。上の動画でも1本目はあまり助走を取らず蹴り足のみグイッと上げて蹴っているのに対し、2本目は全力で助走から蹴り足を素早く振り抜いているという違いがはっきり分かると思います。どちらも蹴った後のフォロースルーが大事です。ボールと接する時間が長い程回転がかかる。

 と、まあこんな感じです。あの一瞬でさえ駆け引きと技術の応酬がある。それが面白いんですよね、フットボールは。後は自分で練習して掴んで下さい。多分こんなことを教えられる指導者はほぼいないと思います。僕自身見たことないです。ドライブシュートや無回転、あれも特に難しくないレベルの技術です。それを指導できる指導者がいないのが問題ですね。


 次にPKですが、これもギリギリまでGKの様子を見ます。先に動いたら逆に転がせばいいです。動かなければ、予め決めておいたコースに蹴ります。ゴールを6分割したとき、GKの左右の上のネットが一番取られにくいです。僕は基本的にそこのギリギリにしか蹴りません。わかってても捕れないですから。

 プロの成功率は7割。10本蹴っても8点獲れないんですよ、PKって。それだけGKのレベルも高いし、どの舞台で蹴るかも大きいでしょう。WC決勝とか、足が震えるでしょうね、きっとw


 ということで今回はこのオフで僕がひたすらやっていたFKのことについて書いてみました。色々な選手の直接FKが今は動画で見放題です。こういうのがあれば僕ももっと色々研究できたかも知れないなあと、産まれた時代の不遇さを感じましたね。今の子供達は周囲にフットボールが転がっている世界。是非もっと凄い選手が出てきて欲しいですね。


 

 


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オフはちょっと旅行とかした程度でひたすら長所を伸ばす練習。

本当はもっと休んだ方がいいのかも知れないけど。

さて今後のKAZUDONAストーリーはどうなっていくのか?

続きが気になる方はどうぞコメントを御願いします。

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で、そんな僕が連載しているファンタジーです。良ければこちらも眺めてやってください! お願いします!

OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653523704177


ではまた次回・・・、書きますよ!

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