第11話 再び回り始める運命・初めて抱く感情

腐ってたところに恩師からの打診。

これがこの後の僕の人生に大きな影響を与えることになります。

どうぞ!

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 T先生は恐らく、僕が高校で荒れてたことを知っていたんでしょうね。この僕にとっては神にも等しい恩師の打診を断る理由は全くなかったです。中学生相手だし、リハビリにも丁度いい。

 そして小学校のS監督ですが、この人は昔からのクソ親父のサッカー仲間。でもヤツと違ってすげえいい人で、何度も遊びに行ったり世話になっていました。同い年と3つ年下の娘さんは幼馴染身だったし、息子が僕の一番下の弟と同い年で、まだ低学年だったけど、弟の指導にも繋がるし、今迄お世話になったお礼もあるので、受けました。


「おいKAZU、ウチの娘のどっちでもええから嫁に貰ってくれーや」


 これはもう全力でお断りしましたwwww(笑)良い娘達でしたけどね。

 月水金は中学、火木は小学校、土日は試合などの関係でどちらかに行ってました。


 指導者として、T先生はもう30後半だったし見本を僕に披露させて指導してました。小学校で低学年のときから僕を知っている子達もいたし、全国初出場の時の10番でキャプテンに中盤のエース、その後はプロのユースに、日の丸候補までいった身です。小中、どちらの教え子達も一瞬で懐いてくれましたね。まあ、肩書が役に立ったのかな……? それにもう別に脚は普通の人程度の状態には戻っていたし、多少ブランクがあっても、まだこのレベルの相手なら何人来ようとボールを獲られることもない。ありがたいことに、すぐにリスペクトしてくれました。


「いいかお前ら、俺の今迄の教え子で最高のが指導に来てくれた。残念ながら、今は怪我のせいでしているが、お前らの誰一人、そして俺が知っている限り、このKAZUほど努力してきたやつはおらん。これからは一緒に練習に混ざって指導してもらう。KAZUのプレーは全てが教科書だと思って盗め! そして上手くいかないプレーがあるなら兎に角質問して学べ! わかったな! 口ごたえは許さんぞ!」

「「「「「はい!!!」」」×約50人程


 まだ選手として見てくれているんだ……。そして紹介あざっす、でもハードル上げ過ぎです、先生www

 中学ではKAZU先輩か、さん付け、小学校ではKAZUコーチと呼ばれていました。


 そして指導者の立場からサッカーにアプローチしたときに、


「あのときってこうしとけば良かったな」

「もっと選択肢があったなあ」

「先生に悪いことしたなあ」

「あの指示をちゃんと聞いとけばよかった」


 等々、勝たせようとしても、教え子達って試合になると、目の前に必死になって、こちらが思ったようには中々動いてくれない。これって、本当に悔しいな。如何に自分が好き勝手にやって、指導者の意図を汲み取れていなかったのか……! これはダメージ喰らいましたね。


「先生、あのときこうすればよかったとか、今になって思います。指導者って、ひょっとしたら闘ってる選手よりもよっぽど悔しいんですね。中学時代はすいませんでした」

「はっはっは、それがわかっただけでも、大きな成長だろ? 一度違う角度からサッカーを見ることで、今後どうするべきか、何処を目指したいのかも変わって来る。そういうことがわかっただけで、お前はまだまだ成長できるんだよ」


 嬉しかった。試合中、教え子、後輩達のプレーを見ながらベンチの先生の隣で涙が止まらなかった。この人はどんだけ凄い人なんだろう。それに比べたら、たかがこんな程度の怪我で自分を見失っていたなんて、俺はなんて小さいんだろう。そんな自分を恥じました。まだ選手としての道は閉ざされていないんだ。なら前に進むのみ!


 小学生の指導はもっと大変でした。基礎の基礎を飽きない様に反復させないといけない、


「いいかー、これからやる練習は試合の中でのこういう局面で役に立つ。上手くなりたいのなら練習中から常に試合中だと思って気を抜くな。技術的なミスはこれから修正したらいい、だが、気の抜けた意図のないプレーは許さんぞー」


 偉そうに講釈を垂れてましたww そして指導者として全国や各地の遠征に帯同し、指導者の立場の難しさ、外から俯瞰した、選手目線ではない違った一面からのサッカー。多角的にサッカーを見る、知る、認識するということができた。今迄に足りていなかったフィールド全てを上から俯瞰して見る。空間把握能力と上からピッチを見る様に試合をコントロールするという個人戦術。元々備わっていたそれが、この基本の繰り返しを反復したり指導することで、更に選手として出場する実践機会も後にあり、これがその後の莫大な財産になったと、自信を持って言えます。

 歳も近い選手たちは、まるで自分達の兄貴の様に接してくれて、いつも、


「今日もありがとうございます、先輩!」

「KAZUさん、今日も勉強になりました。あのプレー練習しておきます」

 って感じで感謝してくれました。今でも連絡をくれますよ(笑)


 そして保護者の方々は、こんなに腐っていた自分に、本当に感謝してくれたんです。これが多分一番心にキたと思います。


「KAZUさんが来てから、息子の意識が凄い変わったんですよー!」

「これ、KAZU先輩がやっとけって言ってたから、今日から家でやるとかいいだしてねえー」

「保護者のみんなが本当にあなたに感謝しているんですよ!」


 等々、もう覚えていない程たくさん。親にすら褒められたことのない自分には、この経験は本当に衝撃的でした。自分はただサッカーが好きだから、本気で教えてはいました。でも自分の好きなことをやって、感謝される。もう凄い感動でした。感銘を受けました! なんかもう言葉にならなかったです。語彙が足りません。保護者の方々がいつも差し入れをくれるんです。なんで俺なんかに? 今迄感じたことのない感情でした。人知れず涙しました。これが感謝されるってことなのかと。こうして見ると、僕は泣いてばかりですね。この経験が後に教師を目指す切っ掛けになった。もう確実に影響していますね。


 勿論先生やS監督には色々と今後のことは相談して、進路は固まってきていました。「やっぱり自分はサッカーが好きだ。たった一度の挫折で諦めてたなんて、俺って小っちぇなあ」って。「俺からサッカー取ったら何が残るんだよ? なら徹底的にあがいてやらあ!」って。 T先生は


「KAZU、プロになれるかどうかは俺にもわからん。でもお前は指導する立場にあっても本当にサッカーに対しては真摯だ。そんな真っ直ぐなやつがプロになれない世の中なんて腐ってやがる。信じた道を行け。その先に夢が絶対ある」


 そう言って、日本を発つ前には発破をかけてくれました。なんてカッコいい人なんだろうと思った。中学の時、練習中怒られまくったときに、陰でみんなで文句言ったりしてごめんなさい。今でも勝てる気がしませんね、色々な意味で。


 高校卒業を控えたとき、学校の教師は東大や京大進学を勧めて来ました。パンフレットとかでの実績の外部アピールになるからですよ。でも僕の家は現役で大学に行ける程裕福じゃなかった。下にまだ2人いるし、公立であっても仕送りは必須。それにこいつらの言いなりになるとか絶対やだ、知ったこっちゃねえ。

 僕にはもう迷いはなかった。「遠回りしてでも海外に出る。そこでプロになってみせる。諦めるものか」と。


 卒業後、1年間指導者を手伝いながら昼間に土木、夜はコンビニバイトなどをして、進学費用を貯めました。土日とかは年齢を誤魔化してもらってT先生と教員団の試合に出たり、先輩たちが創った県リーグのチームに出場し、結果も残してました。目標が決まれば、もうそこへ向けて走るだけですから。


 まあ息抜きに恋愛話も入れておきましょうか(笑) 卒業間近で部活の最後の練習試合に呼ばれて隣の市の私立高校に行ったときです。僕の名前はまだ地元では色あせていませんでした。そしてそこの学園のテニス部の女子が、まあ他にもいっぱい客はいましたが、見に来ていました。そのテニス部の一人の子が、もうめっちゃかわいかったんですよw

 Eカップの菅野美穂、今形容するならそんな感じです。女性読者さん、ごめんなさい。ガキだったんですw アップが終わったときに、その子の座っているスタンドのところに行って、驚いている周囲を無視して、


「あんた可愛いな、めっちゃタイプやわ。もし俺がこの試合でハットトリックしたら付き合ってくれ」


 そして周りの生徒から文房具をぶんどって、連絡先をその場で交換。スタンドはもう大騒ぎですよ。その子Mちゃんはポカーンでしたけどねw そらそうなるやろw

 そんで本来は後半から出るんですが、使えない顧問に言って、


「前半から出せ。ボコボコにして来る」

「お、おお……、分かった。頼む」


 15対2。ファイブハットトリックです。足の違和感ももう薄れていましたね、この頃には。

 試合後、Mちゃんのところにダッシュです。


「ごめん、3点の約束が15点獲っちゃったわw じゃあ付き合ってくれ」

「わ、私で、良ければ、お願いします……!」


 スタンドは大騒ぎw ウチの雑魚メンバーは、あんぐりです。


「KAZU……、お前やっぱスゲエな。今迄色々と悪かったよ、ごめん」

「俺も!」×覚えてない人数

「あ? いや、もうどうでもえーよ。ハナからお前らとかどうでもよかったし」


 と、バッサリ! だってどうでも良かったし迷惑かけられて来たしね。


 でも可愛い彼女できたしオールOKwwww 彼女は浪人して予備校通いでした。僕は講習会や、模試くらいは受けに行ってましたけどねw 基本バイトに自主勉です。指導も試合も自主トレも欠かしませんでした。

 

 そして、外語系の大学に進学しました。目指すはイングランド! サッカーの母国です。そして入ってから、留学枠が、一学年1桁ということを知ります。初めて人生で帰国子女を見ました。スタートが違う。そんでそいつらが留学枠に殺到して来る。ペーパーで勝てても二次試験のスピーキングで勝てないんですよ。留学経験してないから。なんだこのクソみたいな制度は?


 ならいいぜ、自費で休学して行ってやらあ! またバイトの日々です。そして一年で何百万と貯めて、休学届を出し、一年間という限られた時間でまずは語学学校に入りました。まあ語学できないと話にならないからね。外語系を選んだのもそういう理由です。


 因みにMちゃんは、僕の進学した大学の近くの薬学部を受けましたが、私立です、金持ちですからねw、落ちて遠距離になって終わりました。イングランドに行く話も大泣きされて、精神を壊してましたね、でも仕方ない、最初から言ってたんだし、元気でね。  


 もう気持ちはイングランドしかなかった! ここからが勝負! 絶対にプロになる! 母国に降り立った僕はそれだけしか考えていませんでした。





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サッカーの挫折で腐っていた少年は、そのサッカーに救われました。

そしてここからが僕の人生が大きく変わっていく転機でした。

ここからKAZUDONAのストーリーはまた大きく動き始めます。

続きが気になる方はどうぞコメントを御願いします。

応援してくれると頑張れます!

当時のことを思い出すと、心にきて、今でも涙が出るんですよ。

皆様の応援が書き続ける気力になります。

よろしくお願いします。


で、そんな僕が連載しているファンタジーです。良ければ眺めてやってください!

OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653523704177


ではまた次回・・・、書きます


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