第8話 現実と夢の狭間で

色々と反響を頂けて嬉しいです。

遂にプロへの、トップチームへの切符を賭けたゲームが始まりました。

どうぞ!

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 プロへの契約がかかった、その試合は、何処かのユースとの練習試合だったと思います。すいません、あんまり覚えてないんです。色々とありすぎて。

 ゲームは完全にこちらのペースで進んでいました。中盤のコントロールも上手くいってたし、味方FWにアシスト数発、自分も3,4点は獲ってたと思います。当に絶好調。そう形容することができる程、ここや代表で鍛えられた経験は生きていました。先の先が面白い様に視える。プレーが悉く上手くいく。マンツーマン? 眼中にすらないくらい振り回していました。

 後半に入っても、僕らのペースで9-0の押せ押せでした。でもこういう大勝ちしてる試合って言うのは危険なんです。相手はもう勝負を投げてますから、ラフプレーに走る傾向があります。シドニー五輪の予選で小野が膝に重傷を負ったのは大勝している試合の終盤でした。明らかに「故障させてやんよ」っていう嫌がらせ&報復のタックル。こういうのから主力を怪我から守る為に、敢えてもう流れが決まったり勝負が目に見えているときは、エースや、主力を休ませるのが定石です。

 ですが、この試合は、プロに上がっても90分走り抜けるかという、持久力も見られている。交代は告げられませんでした。そして試合終了直前だったかな? もうはっきりと思い出せないです。ボールを受けた瞬間、後ろからカニバサミの様な悪質なタックルで、ボールじゃない、膝下を明らかに故意に深く削られました。まるでプロレスのキックだったと思います。


 ブチブチィッ!!!


 右ひざから変な音が聞こえました。そして倒れたその場から全く動けませんでした。遠ざかる意識で必死に考えました。


(何だ? 見えていたはず、でも脚に来た。俺のコントロールは完璧だった、獲られるはずがない。じゃあ何でこんなに膝が痛いんだ?!)


 チームメイトやベンチが何やら言ってます。タックルした相手にはレッドカード、そして気が治まらないチームメイトがそいつと乱闘していた、気がします。もう痛すぎて、途中で意識が飛びました。みんなの呼ぶ声が遥か遠くに聞こえました。


 目が覚めたとき、そこは病院のベッドでした。そして天井から右足の膝から下が固定されて吊るされています。もう痛みは、緊急手術の後だったためか、なかったけど、膝から膝を含めた右足下の感覚が全くなかった。ただ脚の形のオブジェがついている様な感覚。義足になったのか? そう思うほどでした。

 その後、ドクターや指導者や首脳陣、チームメイトが訪れました。


「右足の前十字靭帯断裂だ。三か月は安静、その後ボールが蹴れるようになるにはリハビリ次第。元のプレーができる様になる保証はない」

「……そうですか……、これで終わりって訳じゃないんですね? 治します」


 その後、一旦契約は保留になりました。その時のその怪我、前後の膝の十字靭帯ってのは、サッカー選手にとっては超致命的な部位。これで引退やこれまでのプレーが 

全く出来なくなったり、苦しんだ選手は多くいます。R・バッジォ、小野伸二、小倉隆史、海外には書き切れない程います。

 

「復帰して、またプレーができる様になってからこの契約の話はしよう」


 驚異的な回復で数か月でピッチに戻ってきました。でも僕のプレーはもう以前のものと全く変わり果てていました。ズレるんですよ、脳内にイメージしたプレーと自分が。そしてこれまで湧きまくって溢れていたイマジネーションやクリエイティビティ、インスピレーションが全く自分の中から消えました。戻っては来たものの、そのプレーは全く自分のものではなくなっていました。


「しばらく様子を見よう、契約はそれからだ。まだ復帰したばかりで感覚が掴めていないだけかもだからな」


 でも僕の中では「おかしい、変だ」という違和感がずっと取れなかった。数㎝、数㎜のタッチやパスやドリブルの際のズレが、試合を通したらとんでもないズレになるんですよ。もがきましたね、足掻いて足掻いて足掻きまくりました。自主練も入念にやりました。かつての自分を取り戻すために、更に上に行くためにも。


 そして感覚は兎も角、それなりにプレーができる様になったとき、それは起きました。空中で185㎝以上はある相手とヘッドで競り合ったとき、バランスを崩したその巨体が足に乗っかってきて落下しました。足首に


 ガキンーッ!!!


 っていう金属音が走りました。左足首がプラプラで立てません。側副靭帯断裂、また病院のベッドに逆戻り。それから何度も立て続けに重症レベルの怪我に襲われました。自分のプレーがなんなのかすら、もうわからなくなっていましたね。怪我のループがタイムリープの様に続きました。


「すまないが、余りに怪我が多過ぎて、トップフォームも取り戻せない状態がここまで続くと、さすがに厳しい……」

「……そうでしょうね」


 チームは我慢して僕を、期待して使ってくれました。でもトップフォームを取り戻せなかった。そしてその期待を、怪我で裏切ったのは自分です。先が危ない選手と契約するほどリスクがあるようなことはできませんよ。事実上の解雇通告です。そういうチームメイトを何人も見送って来た、それが自分の番になっただけだ。そう思わないとやってられませんでした。もう契約して、Jでデビューや結果を残して居れば別だったでしょうけど。まだ契約前の半人前。


 目の前で掴んでいたも同然のプロの夢、それは儚く砂の様に両手から零れ落ちていきました。死の宣告と同義でした。


 病院のベッドを何度も悔しくてぶん殴りました。涙で目の前はぐちゃぐちゃです。


「神様……。俺、何か悪いことしましたか……?!」



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重たい話を読んで頂きありがとうございます。

皆様の応援で、思い出したくないけど、過去のストーリーが脳内再生されます。

KAZUDONAのストーリーを続けて読みたい方はコメントなどお願いします。

キッツイ経験など多いので、不快に思われる場面もあると思われますが、

応援してくれると頑張れます!

皆様の応援が書き続ける気力になります。

よろしくお願いします。


で、そんな僕が連載しているファンタジーです。良ければ眺めてやってください!

OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653523704177


ではまた次回・・・、うん多分




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