第7話 新たな扉・異次元との遭遇

応援してくれて、感動してくれる方がいらっしゃる。

もうその気持ちだけで書ける。

ここからが本当の勝負です!

------------------------------------------------------------------------------------------------


「じゃあ行って来る。家のこと頼む、全国行けよ。で、お前は絶対に特待受けろ」

「KAZU兄、アンタも漸く掴んだチャンス、先で待っててくれよ」


 二つ下の次男にそう告げて、僕は学校との諸々の処理をしてからユースの寮に入りました。ここからは未知の領域、そして狭き門を潜るための勝負のとき! まあその前にちょっとこまごまとした内容を話しましょうか。


 夏のフェスティバルが終わってから、Sちゃんと地元の花火大会に行きました。ド田舎の数少ない楽しみ、まだ付き合ってもないのに浴衣姿の彼女と手を繋いで一緒に行きました。知ってる顔にちょっかいをかけられましたが、


「うるせーぞ、他人に喋ったり喚いたら殺すからな」

「いや、ごめん…、誰にも言わない」

「嘘吐いたら殺すぞ」

「吐きません……」

「ならいい、消えろ。視界に入んな」


 ド田舎だからこういうのがすぐ湧く。まあ脳も湧いてるんでしょうね。他人のプライベートや色恋沙汰に何とも思わず侵入してきて、あることないこと言いふらして来る。そう言う奴が僕は大嫌いでした。 

 まあでもやり切った、MVPもとって地元の新聞にも取り上げられていた僕は、凄く晴れ晴れとした気分でした。花火って綺麗だなー、そんなことすら初めて感じたくらい、僕はサッカーしか考えてなかったんでしょうね。


 帰り道、線路を挟んで反対方向にお互いの家があります。踏切でお別れです。告白しよう、まあもう普通に手を繋いで歩いてるんですけどねwww

 でもねー、自分から告ったことなんてないんですよ。口がぱくぱくして声が出ねえw みんな今迄告って来た女子すげえな、変な振り方してごめんと思いました。アンタらマジ勇者だわ(笑)


 踏切を彼女が渡っていきます、でも声が出ない、そのときタイミングよく電車が二人の間を通過していきました。一瞬だけ落ち着いた、ここで言わなけりゃ漢じゃねえ! 電車が通過して遮断機が上がる前、まだ此方を向いていてくれた彼女に大声で叫びました。


「S! 好きだ! 本当は中学のときからずっと好きだった! 俺と付き合ってくれー!!!」


 一瞬戸惑った感じの彼女でしたが、口に両手でメガホンみたいなかたちを、こう作って、返事をしてくれました。


「ありがとう!!! 私もそのときから好きだったよ!!! これからもよろしくおねがいします!!!」

「大好きだー!!!」

「大好き―!!!」


  遮断機が上がった踏切をお祭り帰りの人達や多分中学生くらいの女子の集団が、キャーキャー言いながら通過していきます。でもそんなことどうでもよかったです。向こうまでダッシュで渡って、キスしました。周りに人いるのにねw 若さって凄いですねー(他人事)ザ・青春です(笑) でもすぐに僕は地元を離れることになりました。夢が待っています。彼女のことだけを考えてはいられない、超ハードな日々が待ってましたから。



 二学期、チームに合流した僕は新たなチームメイトと知り合います。もうほとんど名前も覚えてません。所属していた期間が短いこともありますしね。みんなギラついてました。ユースからJのトップチームへと契約できるのは約30名ほどいる中での、ほんの1,2名という一握り。練習中から、常にチームメイトがライバル、一瞬も気が抜けません。中学の時の、あのT先生のもとでプレーをしていた日々を思い出して心地よかった。あの高校でのお遊び雰囲気から、やっとピリピリの雰囲気の中に戻って来た気分で、武者震いが止まらなかったです。一人一人と握手して


「よろしく」

「よろしく」


 目が笑ってないんですよ、「ちっ、ライバルが増えたぜ」、そんな敵意丸出しのよろしくです、もうねーゾクゾクしますよね(笑) そして寮は狭い1人部屋でした。ロフトベッドで寝てましたね。もう記憶も曖昧なので、事実と多少ずれがあるかと思います。


 早朝から昼まで、昼食をはさんで夕方からナイターで20時くらいまでずっとサッカー漬けです。座学で戦術論とか、プロの試合を見たりとか、これは新鮮で面白かったですね。後は語学。トップチームには外国人が入ってきます。コミュニケーション能力がないと、意志の疎通は取れない。理にかなっていました。

 屋外での練習は芝生でしたけど、まーエグかったですよ。濃密でした。一瞬たりとも気は抜けない。自分が高校で如何に楽なぬるい練習を(自主練は含めず)してきていたのかと痛感した。指導者も外国人スタッフ大勢、プロを目指す機関がどれだけ先を進んでいるのか思い知りました。最初の数日間は毎日筋肉痛ww まだやんの? っていうボリュームでした。そして勉強は通信制。単位を取れないと進級させてくれませんし、干されます。

 最初の数か月は適応、アジャストすることに必死でした。+アルファで自主練をすることは欠かしませんでした。10時にナイターの明かりが消えるまで一人で練習していました。今でも自信を持って言えますよ。「俺より努力した奴はいない」って。


 当然Sちゃんと連絡は取る暇もない。寮の電話は1台、みんなが使うし、チームの指示とかも来るので占領する訳にもいかない。文通してました(笑) いつの時代だよ!? それくらいサッカーオンリーの生活だったんですよ。週末? 遠征です。各地方へ行って、そこの強豪校や、県の選抜、ユース代表と試合です。サッカー自体は充実していたので、プレーに影響はなかったし、ずっと好調でした。チームメイトも徐々に受け入れてくれて、良い意味で仲良く、仲間になっていけました。


 そして、全国のJ下部のユースチーム。クラブチーム、県のユースなどが集まる全国大会のユースカップに出場しました。レギュラーもキッチリ手にしていました。中央のミッドフィールダーか、システムによっては、僕のスピード50m5.7秒、を生かすワイドの担当でした。この大会で、僕はこの世代が黄金世代ゴールデン・エイジと呼ばれる所以ゆえんをまざまざと見せつけられました。


 先ずは静岡県ユース、中盤のO・S(名字・名前順にしておきます)は既にこの世代の日の丸、フォワードのT・N、キーパーのMなど。化け物が揃っていました。特にOは一つ下でありながら、もう10番を背負っていました。初めて、T先生以外で、ボールが取れない相手でした。取りにプレッシャーをかけに行ったときに、ボールが消えました。気が付いたとき、自分の頭の上にボールが浮いていました。普通ではない、どうやったのかわからないヒールリフトでした。そして落ちて来るボールをそのまま2,30mくらいのループシュート、ウチのキーパーは一歩も動けない完璧なコース。鳥肌が立ちましたね。


 地方のド田舎で調子に乗っていた少年はこのとき、世界の広さを痛感しました。GユースのI・J、フィジカルでぶつかったときに鋼鉄の壁にぶつかったかと思う程の強靭さ。右サイドを突破して行ったときに、シュートスピード(約160㎞)のクロスを、Aにふわりと至近距離で胸トラップされました。横浜だったかな? そこのN・S、こいつは今後長く日本の10番に居座った左利き。もう、形容する言葉が無かった。紅白戦とかで、パスを受けたときに、ふわりと足元に落ちて来る繊細なタッチに、コーナーキックのとき、


「ファー、合わせるからそこにいて」

「え? わかった」


 本当に低身長の僕のとこにドンピシャで来るんですよ。とんでもないボールコントロールでした。そして上の世代にはN・HやY・Aという化け物がいました。レベルの差を見せつけられて生まれた世代を間違えたかな? とさえ思いましたよ(笑)


 ユースの日の丸の選考合宿にも参加しましたね。日の丸が如何に遠いかを痛感しました。才能の差っていうのをここで初めて悔しいと思いました。僕は生まれ持っていたひのきの棒を磨きまくってましたけど、本当の怪物は生まれながらにエクスカリバーを装備してるんですよ。まあ悔しい思いをしました。でもプロになってからが勝負だと思っていました。

 こういった経験を機に僕はさらにレベルアップして、高校三年の春、トップチームとの契約の話を貰いました。実はこれを書いているときの現2023年時点の日本代表監督さんは、このユース時代によく自主練を見て貰ったり、個人的に教えて貰った方なんです。とてもお世話になりましたね。


「KAZU、今日の試合後、トップ契約の話があるからな。気合いれて行けよ」


 燃えていました。ヤヴァイ異次元の奴らとの出会いは僕を更に成長させてくれたのです。


 Sちゃんは中々会えないことに耐え切れず、


「サッカーと私、どっちが大事なの!?」


 まあ構えなかった僕の責任ですけど、会えなくなるのは前提でしたから。契約ができればプロになれる、報告に戻ったときには会えるんでしょうけど、さみしかったんでしょうね。


「順番は付けられない、でもどうしてもって言うのなら、ごめん、今はサッカーだ」


 こう答えるしかなかったです。まあね、これはどうしようもないですよね。


「支えたい、さみしくてもプロになったら一緒にいれるよね」


って、そう言ってくれてたから付き合ったんですけどね。多分向こうがツラい時期だった時に、遠方の僕が何もしてやれなかったのがこの結果になったんでしょうね。スマホがあれば良かったかもしれませんが、そういう時代です。仕方がないですね。




 そしてプロ契約がかかった試合。僕はここで現実の残酷さを味わうことになります。




------------------------------------------------------------------------------------------------

遂に夢の一歩手前まで!

このKAZUDONAのストーリーを続けて読みたい方は是非、

いいねやコメントを御願いします。

キッツイ経験など多いので、不快に思われる場面もあると思われますが、

応援してくれると頑張れます!

皆様の応援が書き続ける気力になります。

よろしくお願いします。


で、そんな僕が連載しているファンタジーです。良ければ眺めてやってください!

OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653523704177


ではまた次回・・・、うん多分

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る