夢の無人島は、残念ミステリー。ああ、ミステリーツアー

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 「リア充」って、どこにあるの?リアルは、助けてもらおうとすればするほど助けてもらえない。ミステリーツアーなだけに、残念ミステリー?

 「ピンチ!俺の住む家が、流された!」

 とあるミステリーツアー船の甲板で、 1人の男が涙。

 大津波が原因で住んでいたおんぼろアパートが流されたのを、思い出したらしい。

 「俺の家」ではないのかもしれないが、ある意味、「俺の住む家」にはちがいない。

 「大海原を見て、家が消えたさみしさをまぎらわせよう」

 そこで、このミステリーツアーに参加したわけ。

 どこの島にいくのかは、客には知らされていない。

 「やばい…」

 海を見るたび、津波でアパートが流されたこと思い出すこともあり。

 かえって、落ち込むことも。

 「早く、島に着いてくれよな。なあ、海さん?」

 が、大海原は何も返してくれず。

 ともかく、人気ツアーであることはまちがいない。

 「そこそこ」ステータスある船に、船員と合わせて 100人ほどが乗り込み大にぎわい。

 ビンゴゲームなどもおこなわれ、ふんわかタイムが続く。

 でもねえ…。

 事故は、そんな緊張感に欠けたときに起こるんだな。

 南の海上で急速に発生した台風で、船は大ゆれ。

 津波でアパートが流されてしまった日のことが、よみがえる。

 「ぎゃー!」

 海中の岩に船がぶつかり、沈没のピンチ。

 男は、海に放り出されてしまう。

 船内のビンゴゲームで使われた板につかまり、プカプカ浮いていくしかない。

 そうして…。

 男は、とある島にたどり着く。

 実はその島は、男は知らなかったが、ツアーの目的地。

 波打ち際には、ゴミが散乱。

 「汚いなあ…そうだ!このゴミを積み上げれば、家になるんじゃないのか?」

 住めなくなってしまったアパートの変わりになる家を建ててやろうと、大ハッスル。

 「まるで、俺だけの秘密基地。今どきの奴らは、秘密基地なんていう言葉すら知らないっていうがな。…あ、船がきた!そこそこ、大きい」

 近付いてきたのは、ツアー船。

 島と離れすぎて男にはわからなかったが、男が乗っていた船だった。

 「お~い!」

 当然、男は助けを呼ぶ。

 なのに船は、男が手を振れば振るほどに去っていく。

 ピンチが、拡大。

 島の男には、ミステリーすぎる展開だ。

 船内にいる人たちが、島を離れながらつぶやく。

 「何だ。無人島かと思ったら、人がいる。こんなの、ミステリーツアーじゃないよ。あの島にいくのは、やめよう…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢の無人島は、残念ミステリー。ああ、ミステリーツアー 冒険者たちのぽかぽか酒場 @6935

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ