第33話 【さよならメキシコ】


 私たちは、朝食をたんまり取って、荷物をまとめてから部屋を出た。部屋のテーブルには、飲み干したテキーラの瓶とつかさと私が口を付けたグラスが一つ、私たちを静かに見送っていた。

チェックアウトを済ませ、荷物をロビーに預けて街に出た。街は、今日が死者の日、本番とあって、多くの人が骸骨の仮装をしたり、様々な仮装をして繰り出して、子どもたちのパレードも行われていた。私たちは、美味しかったタコスの店に行き、飲み物と一緒にタコスを一つずつ食べた。いよいよ、オアハカを出発である。


レオン・グアナファトバビオ空港を出発し、メキシコシティで一旦降りてから成田行きに乗り換えた。出国手続きも旅行社が用意してくれていたカードで上手くいき、問題なく、帰国の途につくことが出来た。帰りの便は、満席ではなく、三席あるうちの窓際につかさ、真ん中の席に私が座った。通路側は誰もいない。隣の人に気を使うこともないし、つかさにも気を使わず、たぶんイビキをかきながら私は眠っていた。つかさはリメンバーを改めて英語版で見ていた。時折、考え込んだように、泣きそうな顔になっていたが、映画に感動してなのか、あゆみのことを思い出してなのかはよく分からなかった。

「成田にお母さん迎えに来るんだよね?  お母さんを食事に誘っていい?」

「えっ、私じゃ飽き足らず? 私じゃ満足出来なかった?」

「いいえ、そんなことありません。つかさは最高です。これからも付き合わせて下さいとお母さんに頼む。あははは。家族ぐるみでねって」

「こうじさん、欲張りねぇ」

「あははは、お母さんは俺からしたら充分ギャルだからね」

「まあ、頑張って下さい」

「はい、つかさも今度は、彼氏とゆっくり来たらいい。いいところだったね。こんな素晴らしいところに俺を誘ってくれてありがとう。今度は俺も嫁さん誘って来るよ。もっとゆっくりなスケジュールでね。エコノミーはやめとく」


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