第56話 衛生学・ようこそ蚊の世界へ
蚊。
夏にプーンとうるさいですよね。あの音だけで、なんだか痒くなったり。
そんな彼ら。不快なだけではなく、病気を媒介する代表的な節足動物です(衛生動物のひとつ)。
蚊が媒介する病気は、例えば動物にかかる犬糸状虫、鳥マラリア。人獣共通感染症なら日本脳炎、ウエストナイル熱が有名です。
ってことで、獣医学でも研究対象になる、蚊。
私は学生のとき、蚊が媒介する寄生虫の遺伝子解析をしていました。
こう言うと格好よさげですが、実際は……
①虫取り網を持って草むらを歩き回る
②捕まえた蚊を冷凍
③蚊を顕微鏡で観察→必要な部位だけ取る
④ひたすら実験
という、超地味~な作業です。
③でやるのは、蚊の種類と性別の鑑別です。
色や形、後ろ脚の模様なんかで種類を見分けて記録。
そして触覚の形で雌雄を見分けて、雌だけ実験に使います。雄の蚊は吸血しないので、100%寄生虫がいないからです。
ちなみに、雄の蚊は朝露とか花の蜜で生きてるそうな。妖精みたいでかわいい奴らめ~。
1日数時間、顕微鏡で蚊を眺める。
そんなクレイジーな研究室生活(3年)を過ごしたら、一目で蚊の種類が分かるようになりました。
会社で、蚊が腕に止まったとき。パチンとしとめてから、
「あ、ヒトスジシマカだ!
冷凍前だと背中の白い線がキレイだわぁ。あと、後ろ足が5節目までシマシマでおしゃれなのさ~。見る?」
と同僚に言ったら、「ヤバいもん見ちゃった」みたいな顔をされました。
また変人の片鱗を出してもうた……。
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