第55話 臨床学・動物病院は揃える道具が多い
犬は色んな大きさの子がいます。
例えば、ラブラドール・レトリバーと、柴犬と、チワワと、三毛猫が並んでいるところを想像してください。
チワワと三毛猫は、いかにも同じ首輪を着けられそう。
でも犬3匹は、同じ首輪を着けられない。大きさが違うので当然です。
これはつまり。
動物病院では、サイズ違いの同じ道具を揃えないといけない、ということ!
例えばエリザベス・カラー(傷を舐めないための襟的なもの)。
首の太さが違うので、だいたい部屋の壁とかに、大・中・小が並んでいます。
麻酔のときに使う、気管チューブもです。
動物によって気管の太さが違うので、大・中・小がある。
注射針も。骨折の治療に使うプレートも。内視鏡のスコープも。なんなら入院室のケージも。
み~んな、大・中・小!
ってことで、動物病院の開業には、けっこうなお金がかかります。
犬猫病院って看板をかけておいて、「うちは小型犬と猫しか診ません」とは言えないからね……。
ベテラン獣医師になると、動物を持ち上げたときに、
「あ、この子4kgくらいだ。6mmの気管チューブだな」
となるそうな。
知り合いのおばさま獣医師の話です。
地域の催しで、「奥様にかぼちゃの重さを言いあててもらおう」というものがありました。
5人の奥様の前に置かれたのは、ひとつのかぼちゃ。
奥様方は首をひねりながら、かぼちゃを持ち上げます。
普段の料理なんて目分量だから、持ったかんじで重さが分かるわけない。
しかし、おばさま獣医師は断言しました。
「1.7kgくらいだと思う」
結果は……たったの100g差!
おばさま獣医師は景品をもらって喜んでいました。
いわく、
「昨日、手術したチワワと同じくらいの重さだったのよ~」
とのこと。
あっぱれ!!
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