第53話 繁殖学・採精実習はメンズにはキツい?

 動物の繁殖は、獣医師の仕事のひとつです。

 繁殖に成功するには、メス動物の性周期を把握したり、オス動物の精子の観察が必要です。


 オス動物の精子の観察は、こんな感じ。

 ・精液をとり、顕微鏡で観察する

 ・精子の数、形、運動性を見る

 交配しても、精子が異常(例えば少ないとか、奇形が多いとか)だと繁殖に成功しない。なので精子の観察は大事。


 こんなことをやっているので、獣医師は生殖ワードを使うのに躊躇いがありません。

 精子も月経も真顔で話します。

 恥ずかしいかって?

 いえいえ。もはや何も感じない。

 ニヤニヤしながら生殖ワードを言う人を見ると、すんっ……となります。

 例えるなら、「うんことか言ってニヤニヤしている、小学校低学年の子供を見たとき」みたいな感情ですね。


 そんな獣医師でも、学生のうちは、まだ多少の抵抗感があったり。

 大学5年生の、繁殖実習のときです。

 班ひとつにつき、犬一頭とシャーレが渡されました。「精液をとって(採精)、顕微鏡で観察せよ」、ということです。

 うちの班は、私を含む女性3人+男性2人。

 そう何回も採精はできないので、誰かが代表してやることになる。

 じゃあ、誰がやる? となったとき、男性2人は断固拒否しました。


メンズ①:「言っておくけど、俺は絶対にやりたくない!!」

メンズ②:「……(青い顔で首を降るだけ)」


 え、そうなの??

 不思議でしたが、私と、もう一人の女性の2人で、協力して採精。

 男性2人は精子の顕微鏡観察も、なにやら辛そうな顔でやっていました。


 そういえば、メンズ②。大学2年生の頃の解剖実習で、馬の陰茎の断面をスケッチするときも、泣きそうな顔になってたな……。

 私は牛の卵巣の触診とか、なんとも思わないのだが。

 男女の違い?

 男心は繊細ですなぁ~。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る