第48話 臨床学・動物の気持ちを知りたいか?

 異世界転生もので、「動物の気持ちが分かるようになってモフモフ天国! 幸せだぜ!」的なの、ありますよね。

 たまに人に聞かれます。

「獣医だと、やっぱり動物の気持ち知りたいんだよね? バウリンガルとか買うの?」

 いいえ。実はあんまり知りたくないんです……。

 というか、動物の気持ちに寄り添いすぎると、獣医師をやるのは難しい。


 なぜかというと……

 獣医は、「動物の健康を管理することで、社会人類に貢献する仕事」だから!

 動物ファーストではないのです。


 これは、獣医大学の最初の授業で習います。

 ちょっとショックですかね?

 私は18才の頃、これを聞いて衝撃を受けました。

「獣医師って、動物が好きで、とにかく治したい人の集まりなんじゃないの?!」

 それは正しいものの、全てではなかったんですよねぇ。


 もし動物ファーストだと、こうなります。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 獣医師:「骨が折れてるね。君はどんな治療をしたい?」

 猫:「キシャー!(触んな、痛ぇんだよ!)」

 獣医師:「おたくの猫ちゃん、治療は嫌みたいですね。お帰りください」

 飼い主:「えぇ~…」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 色々おかしいですよね。


 獣医師は、動物と飼い主さんにとって、最善と思われる選択肢(治療法)を提示します。

 でも、選択肢を選ぶのは飼い主さん。動物自身ではありません。犬猫への意思確認はできないですから。


 ということで。

 動物の気持ちが本当に分かったら、獣医師が浴びるのは罵詈雑言の可能性大です。

 怖いわぁ……。あんまり知りたくない。


 ただ、もし動物の気持ちが分かるなら……

「痛いの左の腹部だよね?」

「そうだよ!」

 とか教えてもらえて、超便利ですね。


 

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