第40話 繁殖学・牧場実習は健康的

 牛はたいてい、深夜に出産します。

 真っ暗な時間の方が、天敵に襲われる可能性が低いからです。

 今の牛達は農場で暮らしているので、天敵は近くに来ないんですが、昔の名残なんでしょうね~

 そしてこの深夜の出産、農家さん泣かせです。

 牛農家さんは朝早いので、深夜まで起きてお産に立ち会うのはなかなかハード。

 牛農家さんは普段、朝5時に起きて、夜は21時に寝る生活。それが深夜1時からお産が始まると、ほぼオーバーナイトです。

 うーん、辛い!

 ……獣医師の私が、なんで農家さんの生活を知ってるかって?

 牧場実習のおかげです!

 

 この実習。獣医学生が牧場に行き、農家さんの指導のもと、牛から乳を搾ったり、エサをやったり、牛舎を掃除したりします。

「獣医師なんだから病気を治すだけで良いんじゃないの?」って思います?

 いえいえ。

 農家さんの生活を知らない獣医師は、農家さんにとって的外れなアドバイスをしがち。

 農家さんから「あの若先生、何にも分かってないな!」と思われると、治療なんてできません。

 牛達は農家さんの財産。それを委ねてもらうには、農家さんに信用されるのが大事なのです。

 

 私の行った牧場実習はこんなん。

 ・5時に起床

 ・6時~8時に搾乳、乳の搬出

 ・8時に朝食

 ・9時に牛の放牧、牛舎掃除

 ・10~17時に牛のエサやり、牛の健康管理、牧草管理、畑仕事(合間に昼食)

 ・18時に夕食

 ・21時に就寝


 学生は体力がないので17時に離脱しましたが、農家さんは、17時から2回目の搾乳作業→19時に夕食です。

 タフ~!


 夜明けとともに起き、昼は日差しを浴びながら力仕事をして、夜は気絶するように眠る。

 夏休み中、高原でこの生活を2週間したら、心身がスッキリしました。

 生き物として正しい生活だからかな?

 たま~に、無性にあの高原に帰りたくなります。

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