第21話 衛生学・汚水に落ちたら

 大きな動物を飼育すると、避けられないのがスケール違いの排泄物。

 排泄物が環境へ悪影響を与えないようにするのも、獣医学の範疇です。水や土が汚れると、人も動物も病気になるからです。

 固形は土に埋めて堆肥にします。汚れた液体は、専用の施設でキレイな水にします。

 小さな下水処理場が、農場ごとに設置されているイメージです。

 汚水は、微生物の入った泥と混ぜることで、汚れを分解してキレイにします。ありがとう微生物!


 学生の頃、公務員獣医師の仕事を見学したときのことです。

 養豚場の横の汚水処理施設に行ったら、水が溢れていました。何か不具合があったみたいです。

 施設の管理者が見当たらず、水の中に沈んだ階段を上りました。水は茶色に濁っていて、足元は見えません。

 そこで私は足を踏み外し、汚水に落ちました。腰の上までドボンです。

 えんがちょ、と思ったら。……あれ? 臭くない!!

 その時私は体感したのです。

「微生物って、本当に汚水をキレイにしてくれるんだ!」

 水が濁っていたのは、ほぼ泥だったんでしょうね。


 まあ、その後の公務員さんの青い顔といったら、気の毒なくらいでした……

 見学に来た学生がもし怪我でもしたら、責任問題になっちゃうもんね。

 こちらからお願いして見学に行ったのに、とんだ迷惑をかけました。着替えるために車で宿に送ってもらったし、車のシートも汚してしまった。

 あの公務員さんには、申し訳なさと感謝の気持ちで一杯です。

 別れ際に「これで公務員にならないなんて言わないでね~」なんて言ってくれて、とってもいい人でした。


 私は結果的に公務員になりませんでしたが、汚水に落ちたのとは関係ないですよ!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る