第12話 公衆衛生学・プレーリードッグは怖い
動物と人の間でうつってしまう病気を、「人獣共通感染症」と呼びます。
例えば、エボラ出血熱、マールブルグ病、狂犬病、結核、ペスト。
これらの病気に人が感染しないよう、動物の管理をするのは獣医師の仕事です。
で、プレーリードッグについて。
動物園で見たことがある人もいますかね。
大きなリス的な見た目で、後ろ足だけで立ってキョロキョロする、北米の草原に暮らす生き物です。
かわいい?そう、見た目はかわいいですよね...
私も、以前は彼らを「かわいい」と思っていました。
しかし、大学で優秀な教授陣による洗脳(教育)を受け、今や、「怖い!野生には一生お目にかかりたくない!」となりました。
理由は...平然とペストを持っているから!
ペストは、中世ヨーロッパで大量の死者を出した病気。別名、黒死病です。ペストにより、14世紀の地球で、人類の20%が死んだといわれています。
そんな恐ろしい菌を、野生のプレーリードッグはしれっと持っています。彼らは発症しません。
というわけで、プレーリードッグは海外からの輸入が禁止されています。ペストのない日本に、ペストを持つプレーリードッグが入るのを防ぐためです。
獣医学生はこれを叩き込まれます。
色んな授業で、繰り返し「プレーリードッグ=ペスト」と教わると、卒業するときには「プレーリードッグは怖い」となります。
繰り返せば常識になる。無事、洗脳が完了するわけです。
北米のロッキー山脈のふもと、建物もなく誰もいない場所。見渡す限りの荒野に、こう書いた看板が立っています。
「ここのプレーリードッグはペストを持っています。立ち入り禁止です」
広すぎるので有刺鉄線もなく、近づかないのが何よりの自己防衛。
その土地から追い出されたのは人間の方なのです。
...本当の話です。
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