第14話 83C

またダンジョンに来た訳だが、今回は前回の反省をし、マスクとグラサンに鍋をかぶり、リュックを背負い、ついでにライフジャケットを着ている。うん、立派な不審者だ。それにしてもこの装備、ちょっと重い。リュックに色々詰め込んだのも原因だろうけど俺の戦闘スタイルと若干ちがうというのにもある。まあそこはMPとかの関係で使えなくなったスキルが大量にあるから仕方ないと割りきるか。それでも、昨日レベルが上がったおかげでただでさえ数えるのもしんどいスキルが増えてくれたのは嬉しい。この調子でレベルを上げていけばもしかしたらバフデバフ系のスキルや、【修理リペア】とかいうぶっ壊れスキルも夢じゃない。

修理リペア】というものは、MPさえ消費すれば生物を除く物体をなんでも元通りの形に修復してしまう優れものだ。まさに喉から手が出るほどほしいスキルなのである・・・・・・喉から手が出るで嫌なことを思い出してしまった。

俺は割と交友関係は少ない方だと思うが、尊敬している人はそこそこいる。一人は元尊敬していた人になるけど、犬耳に関してはツっこんでは多分いけないピンクの人だ、あんな見っともないとは思ってもなかったけど。

ちょっと話がずれたけど、そのうちの一人であるリョウスケさんのことだ。フルネームは知らないけど、俺に色々なことを教えてくれる金髪で日焼けしたいかにもチャラ男っぽいけどいい人だ。焼肉も奢ってくれる。そう、その焼肉でのことだ。

ふと毒無効がどこまで効くのだろうかと思い、俺は酒を頼んだわけだが、当然ながらそれが見過ごされるわけもなく、リョウスケさんに全部飲まれた。

すると、酔った勢いで三刀流とか叫びだして、手が口から生えてきてどこからか刀までもが出てきて暴れ回ったということがあった。

つまり、喉から手が出るというか口から手が生えるスキルも存在するということだ。もちろん出禁にされた。そういえばあの時も・・・・・・ん?


「ア・・・・・・マス・・・・・・ヨウや・・・」


つっ立っていたら、なんか見覚えがある奇怪なモンスターが今にも干乾びそうに目の前で倒れた。いや、モンスターはもともと奇怪か。

こいつの回収もどうしようかと思っていたけど向こうからやってきてくれたなら丁度いい。拾って水にでも戻しとけば多分元に戻るだろうし。

というわけで【水球ウォーターボール】。このスキルは水の球を敵に放つものだが、使い方によってはその場で浮く面白オブジェクトを作ることもできる。その中に、干物になったこの自称悪魔のモンスターを浸しておこう。戻るまでの間暇だしステータスでも見て試行錯誤でもしておくか。


***


かえる、かえる、かえる、とんぼ、とんぼ

かえる、かえる、とんぼ、かえる、とんぼがえり


3分しかたってないがもう飽きた。そこらへんにいるモンスターを眺めるくらいには飽きた。そもそも俺の戦闘スタイルはその場で思いついたことを行動するようなものだし、何か考えて戦うなんてことは今まで敵がどんなものなのかってことが分かってないんだから全くなかった。だいたい、どこに行けば2階層にいけるんだ?フロアボスみたいなものは存在するのか?

まあ、それも含めて探索するしかないか。

あ、そうそう、ステータスを眺めていて一つ気付いたことがある。それはスキルの発動中はMPが回復していないことだ。この【水球ウォーターボール】を使っている限りでは回復してないということだけが分かるが、早くこの若干水を含んだへんなの起きないと仮説のままになる。


「おーい、早く起きないか、ヘンテコナスビ」


と俺がそういった瞬間、どす黒いオーラを放ちながら、水でひたひたになった木乃伊みたいなのが水球ごと黒いオーラに包まれる。

そしてそれは瞬く間に散り、そこに残ったものは変わり果てた謎の紫の物体だった。

一言で表すなら・・・・・・ヘンテコナスビ?

なんかきもかったのが絶妙にきもいに進化した。ついでに【水球ウォーターボール】の効果が切れたのだろうかMPが回復し出した。あ、そうそう、スキルの持続についてだが、基本的には【発行玉ライト】のようなもとから持続して使えるようもの以外はできないのだが、そのまんま【持続サステイン】というスキルによって出し続けることができたり、出力を上げることができるようになる。その分MPは消費するけど。てかそれも熟練度によって・・・・・・

ってまあそんなことは重要じゃない、今はこの雨上がりさなかのとれたてぴちぴち水滴まみれのナス型モンスターに聞きたいことがある。


「おい、起きろ!どうなってんだ!」

「・・・ン・・・?アレ、オイラ、ネてた・・・?」

「寝てたじゃない、ほら、鏡を見ろ、【ミラー】!」


ミラー】、レベルアップした時に手に入れた魔法を反射できる鏡を出現させるスキルだ。普通の鏡としても使えるだろうと試した結果普通に使えた。そこに映るナスに顔を貼り付け、手足が生えた謎の生き物は自分の姿に驚愕する。


「⬥︎♒︎♋︎⧫︎ ⧫︎♒︎♏︎ ♒︎♏︎●︎●︎!?ドウナってんダ!?」

「いや、こっちが聞きたいんだわ!そんなこと!」

「いや、タシかキいたハナシだとツけられたナマエにジュンじてスガタもカわるって・・・・・・マサか!?ツけてくれたノカ!!マスター総帥!!!ソれで、ドンなナマエなんだ?」


名前・・・見た目が変わる・・・・・・なるほど、そういうことなのか・・・言えない、コイツの名前がヘンテコナスビになっただなんて。

しかもめちゃくちゃ目を輝かせてやがる、めちゃくちゃ言いずらい!


「・・・・・・ヘンテコナスビだ、多分」

「・・・エ?」

「ヘンテコナスビ」

「・・・・・・」


さて、どうするか、コレ固まっちゃったしどうにもならないだろ!


「うおォォ!カッケー!ヘンテコナスビ!!スゲーヒビキだ!!!」


えっ・・・まあ、本人が満足しているならそれでいいか。

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