第7話 垢BAN

やばいやばいやばい、何がやばいってあのモンスターを倒しきれるほどの攻撃手段が今は使えないのがやばい!

そう、いま追われているのはメガスライム、物理系の攻撃が全く通らないという厄介なのがスライム種の特徴でおそらくこいつもこれに該当するだろう。現在使える強いスキルがほとんど物理系だからスライムには通用しない。つまるところ今は逃げることしかできない!

でも、どんどん先に進んだからどこが出口だか忘れた。広すぎて全然わからない!ていうかこんなのを出入口に持ってきたら出入口が使えなくなるからそもそも駄目だ!

そうだ、【浮遊フロート】だ!空に逃げれば流石に追えないだろう。そう決めた俺は全力で【浮遊フロート】を使い空へと飛び立った。

よし、ここまで来れば大丈夫だろう。【浮遊フロート】は低速で飛んでいる場合MPは消費しない。ただ、速度が上がるにつれて消費するMPも増えてくるといった形だ。とりあえずもう一つ確認したいことがあるからステータスを見る。そうすると、やはりと言っていいだろうか、3秒経ってもMPが回復しない。スキルの使用中は回復しないだろうと踏まえていたからこれは問題ない。ただ、なんだかスライムの様子がおかしい。こっちに向かって威嚇しているような、なんだか嫌な予感がする。

その予感が的中したか、スライムは謎の液体を飛ばしてきた。


「うわっ危なっ!」


間違いなくスライムの体液だろう。こんな攻撃もしてくるのかと感心しつつもスライムの動向を確認しながら辺りを見渡す。それにしても、お、あそこだ!通じるかどうかは分からないが、とりあえずそこにスライムを誘導しよう。

俺はスライムと距離をとり、こちらにまた向かってくるのを確認すると俺もあるところに向かい走り出す。

スライムは体ほぼすべてが液体だ。スライムは前にも何回か倒したことがあり、その時倒れたスライムは、液体を噴出して縮む。そしてさっきの体液を吐き出す動きを見るに一部分だけを露出していたから、内部を表面を半透明なゼリー状の殻のようなもので覆われているだろう。つまりは何が言いたいかというと、おっと、見えてきた。沼だ!それもただの沼じゃなく、泥で濁った沼だ。俺はその上を【浮遊フロート】で走っているように見せかける。スライムはというと、泥沼にもつれて動きが取れなくなる。

よし、賭けではあったがこれでしばらくは時間が稼げそうだ。このまま逃げるのもいいが、それだとなんだかもったいない。せっかく動きを止めることができたんだ、液体を飛ばす攻撃を避けながらあれこれやってみた方がいいだろう。まずはそう、【凍結フリーズ】だ。何回かやってはみたものの、これぐらいでは凍らない。ならば【雷撃サンダー】でどうだ。スライムが体液を吐き出すその口に撃ち込む、すると結構効いたのか、もがいているように見える。ただ、このまま【雷撃サンダー】で倒しても芸がない。というより持ってきた秘密兵器を結局使わずに終わるのが嫌だから別の方法をとる。そう、スライムを凍らせるのではなく、この泥水を凍らせればいい。スライムに近づかなくてもいいし、周りが凍ればスライムも凍るだろうという考えだ。

沼を凍らせていくと、案の定といっていいだろうか、スライムの動きが鈍くなっていき、すかさず【凍結フリーズ】を使うとスライムも凍る。よし、これなら秘密兵器が使えそうだ。その名もピコピコハンマー!

ただのピコピコハンマーではなかったのだ。わざわざ危ない場所に変なものを持っていくほど俺は愚かではないのだよ。そう、何を隠そうこれは装備の一種だ。装備というのはドロップアイテムの一種でその名の通り武器や防具だけど持っていたり身に着けていたりすると特殊な効果を発揮したりステータスに強化が入るものを示す。そう、このピコピコハンマーもドロップアイテムで、特殊な効果がある。それは、凍った相手を低確率で即死させるというものだ。さっきから凍らせることばかりを考えていたのはこのためだ。


「オラオラオラオラァ!」


何回も殴り続けると、突然スライムだったものが砕ける。


「うわっ」


びっくりした。初めて使うのもあるが、即死ってそういう感じなんだ。あっ、全部砕け散ったということは魔石もドロップアイテムにも期待できないじゃん。

じゃあもしかしてレベルもと思ったが、こちらはきちんと上がっていた、レベル2に。

いやいや、もっと上がると思ったじゃん。

相手は10こっちは1、もっと上がってもおかしくはないはずだとは思ったものの、ステータスの上昇幅がおかしい、レベルが1上がったとは思えないほどの上がりようだ。あのペラペラだった防御もクソザコ引きこもり実凪くらいのグーパンくらいは余裕で耐えるくらいにはなっただろうし、攻撃方面もかなり上昇している。なにより、おかしいのはMPが5倍だ。まあ、これでも前までと比べれば低い方だが、こんな上がり幅は見たことがない。

次にスキルを確認すると、あれ、かなり増えてる?

中には俺が使えなかった従魔使いテイマーのスキルである【使役テイム】も含まれていた。これは今まで使い物にならなかったコレにも使い道ができる!

まあそれはそれとして、だいぶ時間も経ったしMPが溜まったら【瞬間移動テレポート】で外に出るか。【亜空間口テレポータル】は【瞬間移動テレポート】の2.5倍消費するので1回使えるようになったからとりあえずは問題ないし。ん?ステータスのMPを見ていると回復が若干速くなってるような気がする。測ってみると2秒に1回復しているのが分かった。

まあ、いいだろう。とりあえず【瞬間移動テレポート】を使えるくらいには溜まったから使うか・・・・・・あれ?

あー、ダンジョンは異空間だからできないのか?

じゃあまずは出口に行くか。

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