第4話 唐突な

「しかし、よくもこんなところにこんなモノを作ったよね~」


それは褒めているのだろうか。もっと言い方があったのじゃないのか。ちなみにここは、空き部屋の一つで、荷物を降ろすために来た。実のところ、このアジトの最後の仕掛けとして、12の部屋から4つの部屋にあるスイッチを押すと、玉座が開くというものを考えていたが、途中で飽きて最後まで作りきれていないためここの全ては空き部屋。

・・・おや、実凪が仲間にしてほしそうにこちらを見つめている。

そういえば放置していたのを忘れていた・・・あっ逃げた。


「ひょっとして、あの子が君がいつも口ずさんでいた妹ちゃん?」

「いや、違うけど合っている。とりあえず連れてくる」


確かに俺は言うほど口ずさんではないが帰る口実に妹がいると言っていた。まあ、本当は幼馴染なんだけどほら、妹みたいなものだし。前まではお兄ちゃんお兄ちゃん言ってたし。

あ、いたいた――ってあれ、実凪、怒ってる?

えっと、たしかこういうときは・・・


「どしたん、話き――ぐふっ」

「ばか!」

「前が見えねェ」


なんだあいつ、暴力系ヒロインは今も昔も流行らないの知らないのか?というより、前に金髪で日焼けしたいかにもチャラ男っぽい人から聞いた話だと『女なんて話を聞けば一発よ』って言ってたのに、あれ、嘘だったのか。

そういえばあの時もそうなんだが、実凪が強いんじゃなく、ステータスを見る限り俺の防御が低すぎるせいで簡単にボコされたんだろう。【回復ヒール】【回復ヒール】。

うーむ、それにしてもなんであんなに怒っていたんだろうか・・・・・・。

まあ、考えるだけ無駄か。こういう時は食べ物で釣ればいいだろう。そうと決まったら冷蔵庫の中にある作り置いてたプリンを取りに行こう。

プリンといえば、固いやつだろう。ただ、俺が作るプリンはどうも固くならない。この前だなんてプリンを作ったと思ったらゼリーになっていた。しかも食えなくもないという微妙な味わいだった。今回のはレシピ通りにやったから大丈夫だろう。

よし、ちゃんとあるな。本当は自分で食べる用のやつだったがこれで機嫌を直してもらおう。

で、肝心の実凪はどこへ行った?顔が凹んでいたから分からん。とりあえず吾妻さんのいる部屋まで戻ろうか・・・


「あ、おかえり~、遅かったね~」

「な、なんだよこれ・・・」


そこには、吾妻さんにもみくちゃにされた実凪の姿が・・・


「イエーイ、尾張くん見てる~?君の大事な妹ちゃんは、僕の隣にいま~す」

「本当になにしてんの?」

「見ての通り、よしよししているだけだけど」

「大丈夫か、実凪」

「大丈夫じゃないです、早く助けてください」

「我妻さん、それぐらいにしてください」

「はいはい、わかったわかった。あ、そうそう、僕の名前は吾妻 茜よろしくね」


すかさず実凪は俺の後ろに隠れ、威嚇をした。


「こいつは美濃 実凪という。それで何でああなってた?」

「いや~、あまりにも可愛いからよしよししていたらこうなっちゃってさ・・・」


本当に何をしてるんだこの人は・・・ただでさえ実凪は人見知りなんだから、こんなことしたら避けられるだけだろ。


「ほら、プリンでも食べて機嫌なおせ」

「ふん、私がこれであなたを許したわけではないですからね」


と言いつつちゃっかりプリンは食べるんだ。


「へ~、二人って、兄妹というより夫婦みたいだね」

「俺と実凪は兄妹とかじゃなくてただの幼馴染だ」

「えっ、ああ、そうなんだ。まあ、それはいいとして、これからどうするんだ?」


確かにどうしよう。思いつきで秘密結社とか言ったけどそれ以上のことは何にも考えてなかった。でも秘密結社といえばやっぱり世界征服だよね。


「もちろんそれは世界征服!」

「うーん、でもそれって具体性ないようね」

「うぐっ・・・ま、まずは秘密結社ザスターエンドを拡大するのが第一目標!それに今の俺のレベルだとできることが少ない、よってまずはダンジョンに潜ってモンスターを倒してレベル上げをする!!」

「待ってください!」


と呼び止めたのは実凪だった。


「あの、もうそんな危険なところに行く必要ないですよね。なんで行くんですか!」

「いや、それがな、俺、レベル1になっちゃったんだ」

「えぇぇえ!それってどういうことですか!?」

「俺は早くダンジョンに行きたいから吾妻さん、説明は頼んだ」


俺は逃げるようにこの場をさった。

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