第3話 弱くてニューゲームという名の説明回

住所的にはそれほど離れてはいない、というより歩いて30分程度の距離にあるから覚えていたけど――

瞬間移動テレポート】が暴発して標高がおかしいことになるとは……寸前で【浮遊フロート】を使ったから助かったが。というよりこんなこと初めて起こったんだけど。

まあいいか、たしかこのボロアパートの1階の角部屋、ここか。インターホンを鳴らしてみる。

ピーンポーン

・・・・・・・・・出てこない。

ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーンピーンポーン


「うるせえぞ!!!今何時だと!!!ってあれ」

「もう午後だぞ、いつまで寝てるんだよ吾妻さん」

「尾張じゃないか!ようやく実験台になってくれるようになったんだな!」


この元気溌剌でうるさいピンクの毛玉は吾妻あがつま あかね、変なものばかり作る変な人だ。ちなみにインディゴを作ったのもこの人だ。


「いや、そうじゃない。単刀直入に言おう、お前も秘密結社に入らないか」

「ほ~ん、まあ立ち話もなんだ、入れ入れ」


部屋の中は足の踏み場もないくらいゴミとか変なものとかが散らかっていた。俺だってゴミ出しぐらいはするぞ・・・。

とりあえず、俺はこれまでの経緯いきさつを話した。


「なるほどね~・・・いいぞ、その話乗った」

「話が早くて助かる。じゃあ早速【亜空間口テレポータル】――ってん?」

「おや?珍しいね、魔力切れか」


発動しない。魔力ことMPはまだまだ有り余るくらいのはずだが……


「【亜空間口テレポータル】!!【亜空間口テレポータル】!!!」


ダメだ、全く発動しない。

・・・・・・嫌な予感はしていたけどもしかして・・・

俺はステータスを恐る恐る開いてみると、そこにはレベル1の文字が・・・・・・

レ、レベル1・・・何度見返してもレベル1。ステータスを閉じたり開いたり開いたりしてもレベル1。


「ふ~ん、レベル1か~」

「何見てんだ!見せもんじゃねえぞ!」

「いやいや、他人のステータスは見れないって君も知ってるだろ?これは僕の固有スキル【分析アナライズ】の効果さ」


そういえば例のその固有ユニークスキル、物の情報が分かる【鑑定アプレイザル】の上位互換とは聞いていたがまさかステータスまで見れるとは……

俺の固有ユニークスキルもぶっ飛んだ効果なのだが、諸事情あって今は使えない。例のアジトを作った時にも活躍したやつだ。


「それだけじゃないぜ、ほら、職業を見てみろよ」


言われた通りにステータスを見てみると、職業欄には何も書かれてなかった。


「どういうことだ・・・?」

「さあ、どういうことだろうね。大方予想はつくけど」


いや分からんだろ!分かるのか?そうだとしても嘘こいてるだけだろ!


「いや~、面白いやつだと思っていたけどますます君のことが気に入った。とりあえず、車出すから荷物運び手伝ってよ」


***


色々確認してみたところ、使えるかはさておきスキルは全部残ってはいるようだ。スキルは職業によって使えるものが変わっていく。また、熟練度なんかもある。職業はランク1から5まで存在し、ランク1が下で5が上だ。俺の元職業:大司教アークビショップはランク4の職業で、かなり沢山のスキルを使える。他人にも自分自身にも使える【転職ジョブチェンジ】というスキルがあり、そこで職業のランクが分かるのだが、5は一度も見たことはない。冷静に考えてみれば、もしかしたら無意識で自分自身を【転職ジョブチェンジ】させていたのかもしれない。レベル1になるデメリットがあるし、魔力ことMPもかなり消費するから使うことはまずないんだが・・・。てかステータスにはMPと魔力とで分かれているが、話し言葉では混合して使われているからどうにかしてほしい。

つい最近の出来事で、後天的にも覚醒者になれるという話があった。それは【転職ジョブチェンジ】を使えば誰でもなれるので、それを知った職業:僧侶プリーストたちが【転職ジョブチェンジ】を使って荒稼ぎしているので、治安がめちゃくちゃ悪いことになっている。ランク1の司祭はかなり弱く、レベルも上げにくいから完全に負のスパイラルと化してる。下手したら、今はあの災害の時よりも荒れているのじゃないか?


「着いたけど、本当にここで合っているのかい?」

「ああ、間違いない」


車で走ること5分ほどの場所、ダンジョンの入口その裏手側、そこにアジトがある。例の出来事のせいで、ダンジョンには人がたくさん集まってきたので、こんなにも違法駐車が多い。むしろ、ダンジョンに行く分アジトが見つかることはないだろうからそこは安心だ。


「改めてみると、酷い在り様だね~。まあ、今は全部がダンジョンに突入しているからマシっぽいけど」


つい最近までは、空のモンスターの対応のほうに注視されていたからダンジョンに規制がなかったが、近いうちに規制はかかるだろう。てかもしかしたら俺が連絡を取っていたらこれの対応を押し付けられてたのでは?どちらにせよ、早いところレベルを上げないと俺が入れなくなるのも面倒だ。

ところで、ダンジョンというものは俺も詳しくはわからないが、聞いた話だとあの災害と共に現れた空間異常、ダンジョンの内部はモンスターが出現する異空間で日本のダンジョンはすべて同じ階層に繋がってるとかダンジョンは階層が上がるに連れて他の国とも繋がったりしてるだとか、治外法権だとかしか分からない。いや、割と詳しいのか?内部に関しては全く詳しくないといった方が正しいか。


てかさっきから長いんだよ、川柳で!


まあ酷い

ダンジョンのせいで

治安わる


ということだ。うーん字余り。


「ところで、さっきから歩いているがアジトはどこなんだ?」

「ちょうどこの下だ。【解除シーク】」


解除シーク】を使うと、そこには鉄製の下向き扉があり、そこを開けると地下への階段が露になった。そういえば、今更だが現在のMPは俺が使う【瞬間移動テレポート】1回分と同じで、レベル1であると判明したときには【瞬間移動テレポート】を使っていたのにMPが全回復していた。普通は寝るかポーションを使わないとそこまで早く回復しないのに、一体どういうことだろうか。


「へ~、それって斥候スカウトのスキルだよね。そんなものまで使えるんだ」

「それって、【分析アナライズ】じゃあスキルが分からない・・・ってコト!?」

「そうじゃなくて、流石に多すぎてなにがあるかなんて把握しきれないってことだ」

「なるほど」


俺は【発光玉ライト】を浮かべ、扉を閉じ、【隠蔽ハイド】を使い扉を隠した。


「それって、本当に外から見えないようになってるのか?」

「そこら辺は大丈夫だ。それと【隠蔽ハイド】は【解除シーク】に連なるスキルを使われさえしなければほぼ永久に持続するから問題はないと思う」


なんにせよ、正面から入るのは数ヶ月ぶりだ。そういえば、【瞬間移動テレポート】一回分と現在のMPが同じといったが、あの時【瞬間移動テレポート】が暴発して上空に飛ばされたのもがある。スキルの暴発はMPが0になるときにスキルを使うと、稀に起こり得る現象で、威力が上がったり、MPの消費が減ったりなどの効果もあるが、逆に自分にまで被害が及ぶ可能性もあるものだ。

と、そうこうしているうちに下までたどり着いた。

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