初めての戦闘

【悲報】遭遇したのは召喚者助けではなく、ゴブリン危険だった件。

 そりゃね、こういう時遭遇するのはお約束だけどさ、他のお約束ステータスとかスルーしといてこういう危ないのだけは従うってどういう事よ?

 その辺り小一時間ばかり文句を言いたい所であるが、あちらさんゴブリンは俺の方を認識しているようである。こういう時、実は友好的ってパターンは――ああ、無いね。完全に俺を獲物として見ているギラついてて殺る気満々って目だよありゃ。

 だがちょっと待ってほしい。このお約束的状況だ。大体お約束だと、最初に遭遇するのはスライムとか今のゴブリンとか、弱いモンスターってのが相場。某ゲームの影響で弱か雑魚だったりエロか衣類だけ溶かすような扱いだったりするような扱いされてるけど実は超恐ろしい、とかいうスライムと違い、ゴブリンが脅威とされているのは数が多い時。後自分が女人だった時だ。

 一つずつ確認していく。目の前のゴブリンは一体。そして俺は男。

 俺に荒事腕っぷしスキルが一切ないという問題はあるが、些細な物誤差の範囲内だろう。そういう戦う系はスポーツだろうが何だろうが一切やった事は無いが、ぶら下がる紐相手にシャドーボクシングとか、後イメトレ脳内訓練は十分。

 そして相手が持っているのは刃物だが、見るからにボロボロ。刃こぼれはしているし、錆びた感じもする。切れ味なんてまるでないだろう。当たってもちょっとした鈍器? まぁ頭は気を付けた方が良いかもな。

 体格差も、決して大きいとは言えない俺だが相手は小鬼と呼ばれるような相手。まるで子供だ。恐れるような相手じゃない。


――つまり、脅威を感じる必要はないという事。


「よっしゃかかってこいやぁ! 俺の今後の経験値となれぃ!」


 俺がどっかで見た様な武術多分骨法の構えを取る。

 ゴブリンが跳び上がり、思いっきり刃物を振ってきた。

 腿の辺りを切っ先が掠る。目を向けると履いていたジーンズが切れ、ついでに皮膚も切れたっぽくて赤い筋切り傷が出来ていた。少し遅れて、血が滲みだす。


 うん、十分脅威だ死ぬ可能性あるわこれ。

 何が切れ味は大した事ないだ。滅茶苦茶切れてるやんけ。繊維通り越して皮膚も切ってるわ。何それ怖っ。

 そのゴブリンはというと、勢い余り過ぎて刃物が地面に刺さっていた。深く刺さり過ぎたらしく、何とか抜こうと引っ張っている。

 隙だらけ。好機としか言えない状況だ。


「逃げるんだよぉぉぉ!」


 俺は逃げ出した!

 戦う? 冗談じゃねぇよ! 命大事だよ! 後痛いのも嫌だし!

 大体ね! 初めて、それも刃物持った奴相手に無傷ノーダメで済む訳ねぇだろ! HP1のダメージくらいは絶対喰らうわ! てか今喰らったわ! ちょっとは切られるわ! 現に切られたわ!

 そのちょっとの傷も痛いのも、俺は嫌なんだよ! 普通に考えて!

 だから俺は逃げ出した。思いっきり背を向けて。

 ゴブリンは俺の行動に対応できなかったようで追いかける事は無く、無事距離を取る事が出来た。


――こうして俺の初戦闘は、逃走で何の成果も得られずに終わるのであった。

 

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