異世界、転……移……?

「ど、どういうことだってばよ……?」


 目の前の景色に、思わず呟く。

 おかしい。俺は次なる目的地サークルへと進んでいたはずだ。なのに何で、こんな埋立地●ッグ●イトから山? 森? とにかく木々の広がる景色の場所へ?

 ――いや、一つ心当たりはある。


「――異世界、転移……」


 何時の頃からかあって、何時頃からか流行り始めた作品ジャンル。類似に異世界転生があるが、荷物や衣類は先程と変わらずそのまま。だから転移だろうきっと。

 しかしお約束である異世界行き激突トラックはなかったし、女神やらなんやらのやりとりあーだこーだも無かった。歩いていたら異世界、というパターンもあるが、俺はどこぞの蛮族妖怪首おいてけじゃないし――あ、あれも異世界行く前に誰かに会ってたっけ。

 後ろを見ても、進んでみても戻る様子は無い。だから異世界と現実を行き来する事が可能、というわけでもなさそう。


「――これ、一体どうすりゃいいんだよ」


 頭を抱えるしかなかった。いきなり箱庭オープンワールドに放り出されても、どうすりゃいいか解らないってアレと同じ。目的! 行く先! その辺り提示して!

 ……いやいや、落ち着け。これは現実だ。認めたくはないが現実なんだ。二次元の世界に入り込みたい、とか思っていた頃もあったが、これは二次元の世界とか空想の世界じゃなくて、現実。歩いたら息切れはするし、ついでに木の根に躓いてすっ転んで地味に痛かった。痛いって事はつまり夢じゃなくて、哀しいけれど現実なのよね、この状況。


「……ふむ、とりあえず、やるべき事を考えよう」


 歩いても景色は変わらないし、変に奥に入り込むのは怖いのでその場で座り、何をするかを考える。

 今の状況は、何処か別の――恐らく異世界であろう場所。生えている木々が見た事ないから、多分そうだろう。いや、別に植物に詳しくないけど。

 とりあえず異世界だということを前提とするなら、まずやる事がある。どの作品でも主人公が大体やる事。


「ステータス、オープン!」


 自分自身のステータスを確認する事。これにより自分のレベルやらスキルやら、チートやらを確認する。女神とかからチート継承とかされてないけど、去れている可能性は微レ存なのだから。

 だから俺はその場で叫んだ、ってわけよ。


――結果、俺の声が空しく木霊しただけであった。


 色々試したよ? 言い方が違うのかと『ステータス』だけにしてみたり、他に『ステータス開示』とか、思う着く限りのことを。でも何も出なかった。目の前に開くウィンドウも、頭の中に情報が浮かんで見えるとかも、何もなかった。

 つまり、俺が赤っ恥かいただけ、ってわけ。


――誰もいないで良かった。

 熱くなる顔を感じながら、俺はそう思った。


※間に合わないかと思ったがギリセーフや……

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