第42話 あほんだらー。

お玉達は店の裏側に回って隠れていた。

マダムが気になって仕方ないからだ。


裏の扉が開いた。

チリチリパーマの黒ジャージの金ピカのラインが入ってるのを着込んでサングラスして

マダムは出てきた。


「ほら、みろよ。あんなもん、カタギじゃやねえーから。マダム、ぜっていによう。」ヘム


「こっえーー。貫禄あんな。何者なんだろ?」

お京


マダムは純喫茶、「インダロカ」へ入って行った。

小汚い煤けたぼろんぼろんの喫茶店。


「おい、ここってよー。

うちらが全盛期の時でもよ、入っちゃならねぇーと先輩方が言ってた店だろー?」おみよ


「ああ、そうさ。ここはヤバいってね。

行きは良い良い帰りは墓場って言われてた

よな。」お京


みんなは裏に回って、割れた窓を段ボールで

貼り付けるとこを見つけた。

段ボールを剥がして中を覗く。


「あーんーだーぁーー、あーんだらーー!

いーんだろーかー、いんでまえーー!」

と繰り返し声がするではないか。


「おい、なんだよう。

あーんだぁーって?いーんでないかーとか

言ってんぞ?」お玉


「これは、あれだな、おかしな宗教じゃあねえのか?マダムは教祖なのかもしれねぇ。」

お京


「とにかくよ、もう少し近づいてみないとな。」ヘム


喫茶店の裏を探索してみると、段ボールで穴を塞いだと思われる場所がまた見つかった。

かなりの大きさだった。

しゃがんで入れるくらいの穴。

「おい、誰か最初に入るんだ?

あたいは、腰がヤバいから後でいいや。」おみよ

「てめえ、いつも逃げやがるなっ。

なさけねぇーー。」ヘム


「じゃあ、ヘムがいけよな。」おみよ


「ああ、任せてくれ。あたいはこんな事で

ビビちゃいないからな。」ヘム

(いや、狭いし暗いし、きったねえし。

ネズミがいるんじゃないのか?

あたいはネズミはダメなんだよな、、。

ちくしょうーー。)ヘム


ヘムは仕方なく、這いつくばって穴へとズルズルと入った。

すると、何やら怪しい異臭がした。

「やばい、これは、もしかして毒ガスを製造してるんじゃねぇーのか!!」ヘム

思わず手で口と鼻をおおう。

しげしげと見回せば、ただの和式便所だった。


「なんだよ、しょんべん臭いのかよぅ。」ヘム


「おい、ヘム?大丈夫か?」お京


「大丈夫だ。みんな入ってこいやー。」ヘム


ずんずんと入ってきたら、和式の便所は

ぎゅうぎゅう。

「おい、これじゃあ、身動きとれねぇー。

とにかく、便所から出ようとぜ。」お玉


お玉はこっそりと木のギーギー言う扉を

開けた。


「あー、しゃべん臭かったぜ。

たまんねぇな。」お玉

みんなが出てきたので、ガサ入れをする。

どうも、便所の横は調理場になっているようだ。

薄暗がりなので、老眼チームも大変である。

「とにかくよ、調理場に隠れようぜ。」

お京


「しっかしよー、きったねえなぁ。

床なんか油でヌルヌルじゃねぇか。」ヘム


「ここもくっせーなー。」おみよ


小声でブタクサ言っていると。


『あーほんだら、あほんだらー。

いーんだろか。いんでまえーーー!』

の合唱と木魚のボコボコがしてきた。


「こっこれは、、、。」ヘム


「なんだよぅ?知ってんのか?ヘム?」お玉


「ああ。

あほんだら教。

関西で始まったんだ。これで呪いをかけられた者はいんでまう、つまり、あの世さ。」ヘム


「マダムってよー。おほほとか言いながら

ヤバい教祖だったんだなぁ。」おみよ


「とにかく、見つからねえうちにトンズラしようぜ。こんなもんに関わっちゃいけねぇ。」

お京


コソコソと便所から脱出しようとしたのだが、

お玉が床のヌルヌルに滑ってー。

どしーん。

周りの物がガラガラーーンと大きな音を立ててしまった。


その瞬間、調理場の電灯がついた。






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