第15話 あのちゃんって誰

玉子とヘムは保健室にふたりきりでいた。


「お玉、おめぇ、歳とったなぁ。」


「ばっきゃろーー。あまり前だろ。

てめぇもクソババじゃねぇかよー!

喧嘩売ってんのか?」


「そう、いきり立つなって。

そういやぁ、あの殺ってやるって眼力の吊り上がった目も垂れて丸くなってんな。」


「そうなんだよ、、。

なんだかよ、こっちゃガン飛ばしても、バスで

席なんざ譲られちまわぁ。」


「お玉、おめぇ、もしかしたら、、。

大真面目で学校来てんのか?」


「そうだよ。

あたいは、乙女の仲間になりてぇ。

ついでに恋もしたいくらいさ。」


「ぬぁんだってぇーー!!

乙女に恋ーーー!

おめぇ、、、。」

ヘムは老人の戯言かと思ったが、あまりの

玉子の真剣さに嘘偽りは無いと思った。


「お玉、やれ、やれよ。

おめぇは高校中退だし、悪名がつきすぎた。

そうさな、今なら乙女になれんだろ。」


「えへへ。ヘムよー。

乙女弁当ってすげえんだぞ。

あたいの弁当はよ、ムスメが作ってくれるんだけどよ、茶色弁当なんだ。

乙女の弁当はピンク色なんだ。」


「乙女の弁当か、、。

まさか。おめぇ、弁当のカツアゲやっんじゃねぇだろな?」


「おい、ヘム。あたいをみくびるじゃねえぞ。

シンナー、薬、カツアゲ、万引きなんぞ

やらねぇ。それは、あたいの仁義だ。」


「そだな。あたい達ははみ出しもんだけどよ、お天道様が見られないような事はしてねぇ。

でもよ、便所飯ってイジメられてるやつらの

逃げ場所らしいぞ。」


「よく、わかんねぇなぁ。ただ、便所で弁当食ってるだけだろよ。

便所が好きなんだよ。」


(便所が好き?いや、お玉、そんなもんじゃねぇだろ?おめぇ、バカ過ぎるぞ。

こいつは自分のやってる事がとっぱずれずれが

わかっちゃねぇのか。)

「お玉、便所で弁当食うもんじゃねえぞ。

お天道様の下で食うもんさ。」


「それ、あたいもさすがに便所で弁当は危ねぇと思ったさ。

あたいを盗撮して、熟女シリーズを作ろって輩がいやがる。

困っちまわぁ。あたいの色香に血迷いやがって。」


(熟女シリーズ??あたいは、そんな気持ちわりぃもん撮ってないかんな。

お玉、色香だと。加齢臭の間違いだろがぁ。)

「お玉よ、おめぇ、弱いもんイジメは嫌いだろ?あのちゃん、守ってやんな。」


「おい、ヘム、さっきからよ。

いってぇ、誰の話してんだ?あのちゃんって

誰なんだ??てめぇの知り合いか?」


「、、、。」

(お玉、今までの話は通じてなかったのか?

おめぇ、喧嘩は強かったけど、もしかしたら

ものすごーーーく、アホだったのか、、。

こんなアホと真剣勝負してたとは。

お京、おめぇの頼みはこれだったのか。)


事の深刻さにヘムは、お京のばっきゃろーーと

すぐさま、電話した。



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