第14話 アンパンはあんぱん

教員室に戻ったヘムは、汚れたスマホを

もどーれ、もどーれと必死に拭いていた。


(あ、故障してない。よかったぞい。

くんくん、くっせーー。匂いはとれねぇか。

あのちゃんはあんな事を言ってたけど、

お玉に脅しかけられてんじゃねーのか?

動画再生だ!)

⁉️⁉️

(映らない、いや、データが無いっっ。

おかしい、他のは残っているのに、、。

なぜなんだ?まさか、お玉がやった?

いや、あの蚊並の脳みそじゃ、無理だ。

しょーがねぇ。何かの役に立つ時があると思ったけど、今回は失敗だ。)


午後からの授業が始まり、玉子は教室に戻った。

英語の授業。

玉子は売店で買った、アンパンを隠れて食っていた。

「オウ、ミスタマコ、リーディングプリーズ。」


んがんが。うっぷぷ。

アンパンが喉に詰まった玉子。

パンの入ってたビニル袋を口に持っていく。

ゲボしそうだったから。


「オーマイガー‼️タマコ、シニマスカ?」

英語の先生はアメリカ人だった。


「いや、すまねぇ、てーちやー。アンパンが。

げほ、げほほほー。」


「ハップン?」

先生は両手を上に挙げて、神に祈りを捧げている。


「ねぇ、木村先生、呼びに行くわ。」

学級委員は走った。


「木村せんせーーい。

庭野さんがぁーー!」


「何事?落ち着いて。」

ヘムはなだめるように聞く。


「英語の時間に庭野さんが当てられて

そっしたら、アンパンって言いながら

ビニル袋を口に当ててーー。」


(お玉、てめぇ、授業中に、アンパンだって?

やっぱりシンナーやってやがったな。

今じゃ、アンパンがシンナーなんて知る奴いないと思ったか?)

ヘムは生徒をほったらかして、スケートボードにヒョイとのり、ビュッと80キロのスピードで教室へ向かった。


「アンジー先生、何かありましたか?」

ヘムは聞きながら、玉子を見る。

玉子はゲボゲボしながら、ビニル袋を口に当てていた。

「ミセスキムラ、アノオンナ、シニマスカ?」


(おい、おい、アンジー、日本語とっちらかってんぞ。)

「私にまかせて。」

咳き込む玉子にヘムは近づいた。

そして、耳元で囁いた。

「お玉、アンパンやってんな。

現行犯だかんな、ふっふっふっ。」


玉子はそれどころじゃなかった。

思わず、ヘムの腕を思い切り掴んだ。

(離しやがれ!お玉、えーい!なんて力なんだ!

くっそー!)

ヘムは玉子の背中にカラテチョップを

おみまいした。


ごほほほほーーーん!

詰まっていた、アンパンのかけらが

ビニル袋にポーンと出た。


(何がお玉の口から飛び出したような、、。)


「うーうう。

あー苦しかったぜ。アンパンが喉に引っかかっちまった。ふー。」

玉子は汗だくになりながら、深呼吸をした。

手には食べかけのアンパンを持ちながら。


(アンパンって、あんぱん?)

ヘムは、あんぱんを喉に詰まらせる玉子の

老化現象に物悲しくなった。







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