第7話 仮病

「おかーさーん!

いい加減に起きなさいよぉ!

学校に遅刻しちゃうでしょう!!」

ムスメはギャンギャンと玉子の耳元で

叫ぶ。

玉子は布団を頭からすっかぶり出て来ない。


「玉ちゃん、どーしたの?

学校でやな事あった?」

孫のジュンは心配して聞いてくる。

玉子は布団の中から、

「やすむ、、。」とだけ言った。


「はぁーーー?お母さん!

仮病?辞めてよ、いい歳して!」


「本当だって、心臓が苦しくてたまんないんだよ、、、。うっうっ、、。」


「ママ、玉ちゃん、泣いてるみたいだよ。」


(この鬼ババが泣く?お父さんが死んだ時だって

酒かっくらって、ストリッパーの真似ーと叫んで、脱ぎ出したクソババがぁ?)

しかし、確かに啜り泣きがするではないか。


「お母さん、学校で嫌な事があったの?

話してよ、わかんないでしょう?」


「なんでもねぇわ、、、。」


「ママ、今日は休ませてあげたら。

玉ちゃん、かわいそうだよ。

玉ちゃん、バカだけど、泣くこと無いもん。」


「そうね、ジュンの言う通りかも。

底抜けのバカババが泣くって余程なのかも。

じゃあ、今日は休みますって学校に電話しとくわね。」

そう言ってムスメと孫はいなくなった。


玉子は布団の中で、昨日の出来事を考えていた。

折角の女子高生生活。

どけだけ、楽しみにしてたか?

なのに、なんだって、あんな奴が担任なんだ。

しかも、あいつ、バカから賢くなってやがる。

くっそー。勝てやしねぇ。

一年間もあいつの風下に立つのかと思うだけで

あたいのハートはブレイクさ。


あれは、高校一年の始め。

あたいはカミソリで鳴らしてたさ。

そこへ、ヘムの噂が入ってきたのさ。

周りは噂でもちきりさ。

ふたりがやったらどっちが勝つかって。

賭けまでしてやがった。


台風が近づいてるあの日。

あたいとヘムはやる事になったんだ。

昨日の教室みたいにさ、睨み合いだった。


今だ!!

手応えはあったんだ。

ヘムを見たら、制服のスカートが切れてたさ。

あたいは勝ったと思ったさ。


「ヘム〜、悪く思うなよ。これも勝負だかんな。フォフォフォ。」


ヘムは何も言わずに去って行ったさ。

負け知らずのヘム。

そりあ、へこむだろうよ。


「お玉、お前ーーーっ。」

おみよが指さしやがる。

触ってみたら、、、。


あれ。なんか変だ。あるべき物がないような。

バイクのミラーで見たさ。


「ちっくしょうーーーーーおーー!

眉毛ないじゃんかよーぅーーー!」


勝負はあたいの負けさ。

悔しくて、悔しくて。

今日みたいな気持ちさ。


あたいは自分の勝ちにツェーマンも出してたんだよ。

まるぞんだ。

昨日だって、あたいだけ、アイス食べらんなかった。

なんてこった。


ヘームー、バカやろーー‼️


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