第2話 ザルったら、これ。
玉子の謹慎処分が終わりの初登校。
「お母さん!!
とにかく、見ざる、言わざる、聞かざる!
だからね!!」
「あー?
ザル??えっそうなのか、、、。」
「そーう、三ざるよ!」
「おお?3個もぉー?できかっな。」
「できかっかな?じゃなくてやりなさい!」
出かける前に娘からどやしつけられる玉子であった。
玉子は仕方ないと支度をして家を出発した。
さすがの玉子も迷子にはならずに教室に無事に着いた。
玉子が席に着くと、クラスの視線は集中した。
当の玉子と言えば、ガサガサとデカい紙袋から
何やら引っ張り出している。
「さてと、準備は万端だ。
しかしよ、こんなもん、ご披露しろって
娘のヤツも頭がおかしいんじゃねぇのか?」
ぶつぶつと独り言を言いながら、
教室の前へと進む。
玉子は歌った。
「やすうぎーーぃーめいーぶうつーううう〜」
玉子は踊った。
鼻にはゴムを通した五円玉を貼り付けて、
手拭いを被り、スカートは後ろで背中に突っ込み、マジックで眉毛をぶっとく書き書き。
ほっぺは赤チョークの粉をはたいた。
腰をふりふり、ザルを3枚も持ちながら。
「ねぇ、何?あれーーっ!
おばちゃん、いきなり、踊り出したんだけど。
怖いんだけど。」
「ねぇ、認知症の人って、あんならしいよ。」
「そうそう、うちのばあちゃんも突然、昔の歌を歌い出すもん。盆踊りとかしだすよー。」
「気の毒だね、、、。」
誰かがポツリと言った。
みんな、自分のじいちゃん、ばあちゃんを
連想して、悲しい気持ちになった。
玉子は自分の芸に陶酔していた。
(あたいの渾身のドジョウすくいをお見せするよ。さあ、みんな笑っておくーれー!)
誰も笑ってないから玉子、、、。
フィナーレが近づく、その時。
ガラリと教室のドアが開いた。
ガリ勉校長は唖然とした。
「たったった、玉子さん!
いったい何をやらかしてるんです?
謹慎処分あけたばかりなんですよ!!」
温厚篤実だけが取り柄のガリ勉校長も
声を荒げた。
玉子は最後までやりきりたい!途中で止めるなんざできっこねぇ。と聞こえない振りをしようとした。
「あら?安来節ですか?懐かしいですわね。
まあ、装いまでなさって。
昔から、お、と、く、い、でしたものね。
庭野玉子さぁーーーん。」
玉子はびくぅとした。
背中にタラリと冷や汗が流れた。
(この感じ。ありもしねぇ、金の玉が縮み上がる
感じ、、、。)
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