第2話
――
友人であり写真部の部長である
それほどの実力を持つ彼女が、
「長期貸し出しの手続きも出来ますけど……手続きしましょうか?……もう夏休みになりますし……」
「えっ! マジでっ!?」
直後、
しかし、素の自分を曝け出してしまった事に気が付いた
「ええ……大丈夫ですよ……じっくりとこの本に向き合ってくださいね……」
本好きなら大歓迎だ。たとえ自分の専門外のジャンルでも、図書室に置いてある本をここまで大事に読んでくれる生徒は多くはない。
「私と先輩とは……魂が繋がっているのです」
――いや、その言い回しいいから! 怖いから!
再び
「運命には逆らえない……それが摂理……私は甘んじて受け入れるのです」
彼女なりのお礼のようだ。夏休みの間、
「先輩……私、
「はいっ!?」
「先程、先輩の手を触った時、大きな力を感じましたわ……まさにまつろわぬ魂の力と言うべきでしょう……」
何かに憑かれているとでも言いたいのかと
「朝霧先輩は、その魂に触れる事になるのです……そう遠からず……」
そう言い残すと、
「えっとぉ……」
立ち去る後ろ姿を
車の中で目を閉じた時、不意に
――でも……わたし、霊感ないからなぁ……判らないと思う……
それが
□■□■□■
それから家に到着するのに、さほど時間は掛からなかった。家の中で待っていた彼女の祖母も、
大阪や広島と言った大都会に出て行ってしまい、年頃の若い女性の数が少ないこの町に、久しぶりにやって来た孫娘は、それはそれは美しく成長している。
だからこそ、
地方の町に行ったのだから、
それでも幼心に、この家を包み込むような気を感じたことは間違いなかった。それが何なのかさえも判らぬまま、17歳になって再びこの家を訪れた。
しかし、この大きなヤマザクラの木だけは見覚えがある。
それでも、止めなかったのは、この幹や木の枝に触れるとなんとも言いようがないほどの安らぎと温かさを感じてしまう。
――この木の下で本を読んだらどんなに心地良いだろう……
そう思った
東京のそれとは異なり、こちらの蚊は刺されると痒さも
祖母が用意してくれた浴衣に袖を通し、
この家は、古くから建っていることもあって、いろいろな本が置いてある。まさに古本屋を開いてもおかしくない程の量がある。それは、亡くなった曾祖父の蔵書だというから、本好きな
幼い頃は何が何だか判らず、何となくカビ臭い匂いがして苦手だったが、今日改めて部屋に入ってみると、興味深い本が山のようにあった。
――明日はこの部屋お掃除しようっと……
目についた本を数冊手に取り、
今彼女が読んでいる、古い装丁の本は、今では図書館でも殆ど見ることが出来ない。それが何冊も積んである。
――この本を集めたのは曾お祖父ちゃんってお祖母ちゃんが言ってたけど……凄い尊敬しちゃうな。
今となってはとても貴重な本だ。確かに文体が文語体かつカタカナ表記で、21世紀生まれの
しかし、それを補って余りある程の文字の海は、瞬時に彼女をその世界へと誘っていく。こうして
“キニイッテクレタカイ?”
確かにそう聞こえた。
思わず顔を上げて、辺りを見回した。しかし周りに人影はなく、青い空と大きなヤマザクラの木があるだけだった。
「……気のせいかな?」
ふと腕時計を見る。手首に回した文字盤は、すっかり午後5時を回っていた。
「いけない……もう戻らないと……」
さすがにいつまでもこの場所に居るわけにもいかない。
ザッ……
その時、つむじ風が吹き抜け、
「きゃっ……」
思わず身を屈めながら振り返ると、ヤマザクラの枝が大きく揺れていた。
その枝の動きは、まるで人が手を振っているようにも見え、何かを出迎えているように
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