ホームレス少女と遊びに出る五日目
「……えっ、どこか行きたいって?」
僕がいつもの場所に来てそう話すと、彼女は驚いた様子でこちらを見上げた。
「デートじゃない? それ」
力強く頷くと、彼女は顔を赤らめて俯いた。
「……そうって、そんあはっきり言わなくても。君、私のこと好きなの?」
「まあ、別に答えは関係ないか。男女のお出掛けをデートと換算する人もいるし。でも、私着替えないと。こんな身なりだし」
「……家? あ、そっか。じゃあちょっと行っていい?」
「ありがとう。マシな服着ようかな」
僕と彼女は家に向かって歩き出した。
*****
「で、どこ行くの?」
「……服屋さん? 服買うの? ……えっ、私の? なんで?」
「確かにおしゃれな服は持ってないけど、別にいいじゃん。何か絡まれる方が嫌だし」
「ほら、私可愛いから、おしゃれしたらたくさん目立っちゃう」
「……それはそうだけど、って。今ツッコミ待ちだったんだけどなー」
ツッコむところが無いことを伝えると、彼女は顔を伏せた。
「えっ………………ありがと」
しかし彼女は諦めきれなかったのか、もう一度顔を上げる。
「……あっ、でも、ナンパとかされるかもなー」
不安が押し寄せ、どうしようか考えあぐねていると、彼女は慌てた様子で僕の顔を見る。
「ちょっと! そんなに不安にならないで! 確かに最近あんなことがあったばっかりだもんね。不謹慎だった、ごめん!」
「……やっぱり君、私のこと好きなの?」
「……ライクの方? ふーん……」
照れ隠しで応えたところ、彼女は不機嫌そうに肩を寄せてくる。
「本当に?」
僕は顔をそらすと、隣から嬉しそうな声が聞こえた。
「はいー、私の勝ちー!」
「慣れないのに私をからかおうとするからー」
からかってるつもりはないと伝えると、彼女は驚いた様子で顔を火照らせた。
「えっ、からかってないって?」
「……ふーん。なんかもうさ、好きかもしれない。私」
「……手、つないでもいい?」
僕が何が好きかを尋ねると、彼女は僕の手を握った。
「やっぱり、人のぬくもりだなぁ。優しい人の、優しい君のぬくもり。こんなにあったかくて、さ」
「……もちろん、ラブの方だよ?」
彼女は笑ってこちらを見る。
「ここまでしておいて、責任取らないのは許さないから」
僕はふと思いついた提案を口にすると、彼女はゆでだこの様に顔を赤らめた。
「うぇ!? 一緒に住む!? ごめん、変な声出た」
彼女は冷静に自分にツッコむ。
「そりゃ嬉しいけどさ、さすがにあの家は狭くない?」
「え、もう一部屋あったの? あの家」
「押入れ……私はどこぞの猫型のロボットなの?」
僕はからかったことを謝ると、彼女はしてやられた様子だ。
「え、冗談? うわー、最悪」
「ふふっ、でも君といるとたくさん楽しいことがありそう」
「じゃあ、改めて。不束者ですが、よろしくお願いします」
僕も彼女に倣って頭を下げた。
ある日出会った、猫のようなホームレス少女は、目に涙を浮かべながら笑った。
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