第3話

あれから数年。エリック様はやらかし、婚約破棄され、廃嫡されたと風のうわさで聞いた。まぁ、私には関係ないしどうでもいいことだけれど。

私はシエル様との幸せな日々を送っている。



彼に依存するのはもうやめようと思っているけど、やっぱり離れられなくて、結局私は依存し続けるのだけれど……。

でも、それも悪くないと思ってしまうあたり、私もだいぶ彼に毒されている。でも、きっと彼も私のことを依存してる。



「その恋、幸せなの?」



妹にはそう言われた。

確かに幸せとは言えないかもしれない。妹――アシュリーの言う通り、私たちの関係はどこか歪だ。でも、それでいいんだと思う。私たちはこれで幸せなのだから。



「結局、何でシエル様が姉さんのこと好きになったのかわからないままなくせに?そんなんで本当に幸せなわけ?」



妹の言葉に何も言い返せなかった。だって、正論だもの。それに、彼がどうして私を好きになってくれたのかわからないというか…婚約して数年経っているのに未だに謎なのだ。



だけど、彼はいつだって誠実だった。どんな時でも、私のことだけを考えてくれた。だから、私は彼を信じられた。彼の言葉を信じて行動することができた。

そして、今もなお私は彼のことが好きなままだ。



好きになった理由なんてどうでもいい。今私が彼を愛しているという事実さえあれば十分だと思う。

私にはそれがあるだけで十分すぎるほど幸せだ。



「………姉さんって……本当依存体質よね」



妹の呆れた声に、否定ができなかった。私は誰かに依存していないと生きていけない人間だ。それは自分でもよくわかっていた。

だからこそ、今はこうしてシエル様に寄り添い続けているのだ。



「そんなもの………分かってるわよ」



自分が依存体質だということくらい理解していた。だけど、それでもいいと思っていた。誰かに寄り掛からないと生きられない弱い女だと自覚していても、別に構わないと思った。

シエル様がいれば、私はそれでよかった。



これは物語で見ればハッピーエンドじゃないかもしれない。だけど、これが私の望んだ結末なんだ。誰になんと言われようと、これが私のハッピーエンドだ。



他人に何と言われても構わなかった。

―――例えそれが家族であっても。



「どうしたの?アリシア」



そんなことを思い出していると、隣にいるシエル様が心配そうな顔でこちらを見る。



「何でもありませんわ、シエル様!」



私は笑顔で答える。

きっとこれから先もずっと、この人と一緒に歩いていくのだろう。たとえどんな困難があったとしても、彼と一緒なら乗り越えられる気がするから。たとえ、好きになった理由を知らなくても――。



「(幸せ……)」



そう、幸せなの。

こんなにも満たされているし。だからこれ以上は何も望むことはない。

ただただ、今の幸せを感じていればいい。

そう思いながら、今日もまたシエル様の隣で過ごしていた。

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