もういいわよね?
「あんたが居るから、早めに上がったわよ」
……だからなんの気遣いなんだよ。
後、なんで損な恩着せがましい言い方なんだよ。
俺は別に自分の意思でここにいる訳じゃないからな? そこのところ分かってるよな? 分かってるのなら、今すぐに俺を解放してくれ。
「はぁ。もう逃げないから、本当にこれ、解いてくれないか? 俺も流石に風呂とか入りたいからさ」
「……か、監視のために、私と一緒に入るって言うのなら、い、いいわよ?」
ヘレナは顔を赤らめながらそう言ってきた。
お前、貴族の令嬢だよな? 本当に何を言っているんだ?
いや、そもそもの話、貴族の令嬢がこんな誘拐まがいのことをしている時点で何をしているんだって話しか。
「別に一緒に入らなくたって監視くらいできるだろ」
「……それじゃあダメよ。あんたが逃げようとした時に対応できないじゃない」
俺がそう言うと、ヘレナはそう言ってきた。
「そ、それに、別にあんたからしたら、お風呂に一緒に入ることくらい、なんともないでしょ? もう、リアとは入ってるんみたいだし」
「い、いや、それとこれとは話が別だろ。と言うか、そもそもの話、ヘレナは今風呂に入ってきたところだろ?! なんでまたわざわざ一緒に入ろうとしてるんだよ!」
話を少し逸らしつつ、俺はそう言った。
リアとの件を出されたら、俺は弱いからな。
……まぁ、リアはSランク冒険者とはいえ平民で、ヘレナはそうじゃないだろ、とでも言えばいいだけなんだけどさ。
「……あんたがお風呂に入りたいって言ったからでしょ。私は別に、もう一度入るくらい全然大丈夫だから、いいのよ」
俺が良くないんだよ。
ヘレナと一緒に風呂に入るなんて、取り返しのつかないこと、出来るわけないだろ。
……まぁ、アリーシャには、もう取り返しのつかないことをしてしまってるんだけど、それは一旦置いておこう。
「あー、分かった。監視ありでいいから、風呂には入りたい。だから、取り敢えずこのスキルを解いてくれ」
そう言いつつも、俺はヘレナと風呂に入る気なんて全く無い。
当たり前だ。
ヘレナがこのデバフスキルを解いてくれた瞬間、逃げ出す気なんだからな。
いくらデバフスキルを極めようと、結局、反応出来なければ、デバフを付けることなんて出来ないんだからな。
「……分かったわよ」
ヘレナがそう言って頷いたかと思うと、俺の体が一気に軽くなった。
その瞬間、俺は扉に向かって走り出した。
よし! これなら、扉を開けて逃げられる!
「……やっぱり、逃げようとしてたんじゃない」
そう思って扉に手を伸ばした瞬間、俺の体はまた、力が入らなくなり、その場に手を着いた。
「……い、いや、ヘレナ、これは違うんだよ」
「何が違うのよ」
「そ、れは……」
「そう、もういいわよね? リアともしてるんだものね。少しくらい無理やりでも、そうやって何度も嘘をつくあんたが悪いんだからね?」
そう言って、ヘレナは俺の体に股がってきた。
なんか、少し前に見たような光景だ。
え? 冗談だよな?
──────────────
あとがき。
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【平凡な村に守り神として君臨して早1000年、今までこんなこと無かったのにいきなり生贄が捧げられた俺はこの娘をどうしたらいいんだ?】
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