やっと終わった

 そうして休憩時間が終わるのを待って、リアとラミカが変な喧嘩をしないように気を配りつつ話していると、俺の頑張りのおかげかは知らないが、二人が変な言い争いをすることなく、休憩時間の終わりが告げられた。

 やっと終わった。……ただ、今から帰った時のことが不安なんだが。

 いや、だってさ、ラミカってさ、どこに住むんだよ。多分……いや、確実にさ、俺の家だろ。

 そして、そこには監視役としてリアが居る。

 ……よし、考えないようにしよう。どうせそうなるんだとしたら、今から不安になるだけ無駄だ。俺の頭じゃ解決策なんて浮かばないしな。

 ……まぁ、ただの現実逃避なんだけどさ。


 そんなことを考えながら、また意味の無い護衛の為に出発する馬車の傍に移動した。

 




 そして、意味の無い護衛が終わった。

 元の街……公爵領に帰ってきてしまったんだ。

 

「はぁ」

「ん〜? どうしたの〜? やっぱり〜、こんなところ〜、来たくなかった〜?」


 そう思って、思わず出てしまった俺のため息を聞いたラミカがそんなことを聞いてきた。しかも、割と大きい声で。

 ……これ、絶対リアにも……いや、リアどころか、馬車の中にも聞こえてるだろ。


「疲れたから、ため息をついただけだ」


 もし本当に馬車の中に……フィオラにも聞こえてたんだとしたら、嘘をつく訳にはいかないから、俺はそう言った。

 ラミカの質問を否定するだけじゃ嘘になると思うしな。……帰りたくなかったのは事実だし。

 と言うか、今更だけど、ラミカはフィオラの嘘を見破る目のこと、知ってるのか? ……知らなそうだな。……一応、後でこっそり教えとくか。何か余計なことを言われて、終わる可能性が怖いし。


「このくらいで疲れるなら〜、もうとっくに死んでるよ〜?」

「……」


 多分、裏組織にいた頃の話、だよな。

 そう察した俺は、フィオラが近くにいるしあんまり触れられたくないから、何も言わずにラミカから目を逸らした。

 すると、ラミカも何かを察してくれたのか、特にそれ以上何かを聞いてくることは無かった。

 ……普段もこれだけ察しが良かったら助かるのに。


「護衛の仕事、ご苦労様です。ありがとうございました」


 そう思っていると、フィオラがそう言いながら馬車を降りてきた。

 多分、リアと俺に言ってるのかな。……ラミカは、流石に入ってないだろ。何もしてない……のは俺もか。

 

「報酬は後日、お渡し致しますね」

「ん? あー、分かった。それで頼む」


 そういえば、報酬とかあるのか。

 逃げるつもりだったから、報酬とか全く気にしてなかったわ。

 そもそも、報酬の話とか、してたんだっけ? ……ダメだ。マジで覚えてねぇ。


「私からも、護衛のお仕事、お疲れ様です」

「わ、私も、お疲れ様」


 そう思っていると、今度は中からヘレナとアリーシャも出てきて、そう言ってきた。

 

「ありがとよ。それで、今日はもう休みたいから、帰っても大丈夫か?」

「はい、もちろん大丈夫ですよ。また明日、会いましょう」


 依頼主のフィオラが頷いてくれたから、アリーシャとヘレナに一言だけ言って、俺はそのまま家に向かった。

 すると、予想してた通りなんだけど、当然のようにリアとラミカは俺の後を着いてきた。リアは三人に一言何かを言ってから。

 ……これ、俺の家に全員来るのか? ……もしそうなら、取り敢えずリアに酒を飲ませないことは絶対条件だな。……流石に、ラミカの前でするのは、死ぬ。確実に、死ぬ。

 そう思いながらも、俺は家に帰ってきた。

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