……心配?
あれから俺はフィオラ達と一緒にヘレナとアリーシャが居るであろう門の所に来ていた。
……明らかに、あれだな。
そして、その瞬間、俺は内心でそう思っていた。
公爵家の紋章がある馬車だし、それ以外にも明らかに人があの馬車の周りを避けてるし。……失礼が無いように近づかないようにしてるんだろうけど、逆に失礼じゃないか? って思うのは俺だけか? ……まぁ、別に俺には関係ない事だし、別になんでもいいけどさ。
「あれ〜?」
俺がそう思っていると、ラミカがその馬車を指さしながら、そう聞いてきた。
「まぁ、そうなんじゃないか?」
さっきは公爵家の紋章とか思ったけど、正直に言うと、公爵家の紋章とかあんまり覚えてないし、俺はラミカに向かってそう言った。
まぁ、多分間違っては無いと思うぞ。……あんなところにこんなタイミングよくヘレナとアリーシャ達以外居ないだろうし。……あれがヘレナとアリーシャ達じゃなかったら、タイミングが悪すぎるとしか言いようがない。
「はい、そうですよ。行きましょう」
俺があの馬車が公爵家の物か確信を持ってなかったのに気が付かれたのか、単純に善意で一応言ってくれたのかは分からないが、フィオラは俺の言葉に頷くようにして、そう言ってから馬車の方に進んで行った。
もちろん……では無いんだけど、着いていかない訳には行かないから、そんなフィオラの後を俺たちは着いて行った。……嫌だけど。……めちゃくちゃ、嫌だけど。
「お、遅いわよ!」
そうして馬車に近づくと、出会って早々に俺はヘレナにそう言われた。
……なんか、戻ってね? ……いや、別にいいけどさ。
「……心配、したじゃない」
「え、あ、あぁ……悪い」
ぜんっぜん戻ってなかった。……元に戻ったんだと思ってたから、そんなことを言ってくるなんて全然予想してなくて、めちゃくちゃびっくりしてなんか謝っちまったし。
……と言うか、ラミカ……の強さは知らないとして、リアがいるんだから、心配なんてする必要ないだろ。……いや、もしかしてだけど、俺が逃げてないかを心配してたってことか? ……うわ、そっちの方が有り得そうだな。
今までだったらリアだけを警戒してたけど、今はヘレナのことも警戒しなくちゃいけないのに、そのヘレナに疑われてちゃ絶対逃げられないだろ。ただでさえ難易度が高くなってるんだから。
「……まぁ、あれだ。大丈夫だから、心配なんてするな」
そう思った俺は、逃げる気なんて無いといった意味を込めて、ヘレナにそう言った。
フィオラがいるから言葉選びに困ったけど、多分、大丈夫なはず。……フィオラはアリーシャと話してるし、そもそも聞こえてないと思うしな。
「わ、分かってるわよ。……分かってるけど、それでも、心配だったのよ」
すると、ヘレナは顔を赤らめながらそう言ってきた。
……なんで顔を赤くしてるのかは本当に分からないけど、これからは少しでも逃げやすいよう怪しまれないように気をつけよう。
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