なんか、柔らかい?

「着いた」


 着かないでくれ着かないでくれと思っていたからか、あっという間にフィオラが泊まっている宿に着いてしまって、リアのそんな一言が聞こえてきた。

 

「……? どうしたの? 早く行こ?」


 俺がもう着いてしまったことに絶望していると、リアがそう言って俺の手を引っ張ってきた。

 ここで抵抗なんて出来ないし、リア相手に抵抗なんてしても意味ないから、そのまま俺はリアに連れられて、フィオラが泊まっていた宿の中に入った。

 

「来た」

「はい、わざわざありがとうございます」


 すると、宿の中にはフィオラが椅子に一人で座っていて、リアの言葉にそのままそう言って返していた。

 ……はぁ、ついに中まで入ってしまった。……フィオラも居るし、マジでもう終わりなんだな。

 ……いや、俺がヘレナとアリーシャを誘拐した本当の犯人だってことはまだバレてないから、そういう意味では終わりじゃないんだけど、少なくとも、今回は逃げられないし、やっぱり終わりか。


「あなた……方? もありがとうございます」


 俺がまだ内心で絶望していると、今度はフィオラが俺たちに向かってそう言ってきた。

 ちゃんとラミカにも言うんだな。ラミカがフィオラを護衛してたことなんて知らないだろうに。……まぁ、フィオラからしたらなんかいきなり俺と一緒に居るし、気を使ったのかもな。……俺でもフィオラの立場だったら、そうすると思うし。


「別に私はお前のことなんてどうでもいいし〜、気にしなくていいよ〜」


 俺がそう思っていると、ラミカがフィオラに向かってそう言っていた。

 ……なんか、リアを相手に喋るよりは随分と柔らかいな。……いや、喧嘩腰であることには変わらないんだけど、リアに喋るよりは全然柔らかいと思う。

 ……一応、一回護衛……というか、フィオラを守ったことがある訳だし、それが関係してるのか?


「何か用〜?」


 そんなことを内心で思ってラミカのことを見ていると、不思議そうにラミカはそう聞いてきた。

 

「いや、なんでもない」

「……そう〜?」

「あぁ。……それで、フィオラ、これからヘレナとアリーシャの所に行くのか?」


 ラミカにそう返しながら、俺はフィオラにそう聞いた。

 別に早く行きたい訳では無い。どうせ逃げられないんだし、早く行きたいってだけだ。

 

「はい、もうお二人は門の所に居ると思うので、そちらに向かいましょう」


 はぁ、自分で聞いておいてなんだけど、行くのか。……行きたくないなぁ、マジで。

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